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「世界最強になれる可能性はゼロに近いが、ゼロではない」今年最後のK-1に登場する廣野祐、インタビュー

2017/12/24 13:41

「不倒王」と称され、抜群のタフネスを武器に-70kgの日本トップ選手として活躍を続ける廣野祐へのインタビュー。日本人としては異例の欧州修行中の逸話や、YouTuberとしての側面にも迫ってみた。

いよいよ今年も残りわずかとなり、K-1グループの興行も12月27日に行われる『K-1 WORLD GP 2017 JAPAN ~SURVIVAL WARS 2017~』を残すのみとなった。

同イベントではトーナメントを主体に行われる通常のK-1の興行とは毛色が異なり、翌年以降のK-1出場に向けた査定試合という意味合いを持ったワンマッチ興行のみがラインナップされている。

中でもメインイベントに行われる「廣野祐vs日菜太」の一戦はその最たるものだろう。来年3月にK-1史上最大のビッグイベントとして開催されるK'FESTA.1でのスーパーウェルター級タイトルマッチへの挑戦権をかけて行われ、キャリアの晩年に差し掛かった両者にとってはK-1タイトルに挑戦するラストチャンスを巡る争いといっても過言ではない。

(C) M-1 Sports Media

-70kgにあたるスーパーウェルター級は世界再激戦区と呼ばれ、日本人が世界の壁に跳ね返されている階級だ。とりわけ王者のチンギス・アラゾフは世界でも最も勢いのあるキックボクサーであり、その牙城を越えるのは並大抵のことではない。

今回はそのアラゾフへの挑戦権を勝ち取るべく、日菜太との頂上決戦に挑む廣野祐にインタビューを行った。

廣野といえば「不倒王」と呼ばれ、決して倒れることなく、自分のスタイルを淡々と貫く選手と評価されている。廣野は自身を「決して打たれ強くはない」と評価しながら、なぜそのスタイルを貫いているのか。また日本人選手としては珍しく、度々敢行している欧州への武者修行についても尋ねてみた。

欧州武者修行は意外にホームページへのメールから始まっていた

ーー試合とは関係ないところになってしまいますが、廣野選手は外国人選手のセコンドをやっていたり、欧州のコネクションが深いですよね。立ち技の選手で一番行っているのではないかというくらい。

昔は行っていた選手も多いですけど、最近同じ階級で行った人はいないかもしれないですね。レオナ・ペタスくんがマイクスジムに行っていたりしていましたけど。

ーーそもそもヨーロッパのジムに行くというツテはどこで得ているのでしょうか?

一番最初に海外に本格的に行ったのはタイとフィリピンで、ヨーロッパに行かなかったのはやっぱり費用的な問題です。

行かなかったというより行けなかったというのが実際のところで、片っ端からヨーロッパの色んなジムにメールを送ったんです。トレーニングキャンプをやりたいんだと。

ーーそれはホームページから送ったんですか?

そうですね、ホームページからです。

何通か送って、一番最初に返ってきたのが目白ジムなんです。当時は目白ジムの支部があって、そこの人から来ても良いよと言ってくれました。泊まる所も無料で良いと言ってくれたので、行くことになったんです。

ーーどこに泊まっていたのでしょうか?

目白ジムの支部に行ったんです。

そこにパンクラスに出たことがあるコリン・マンサーという方がいて、目白ジムと併設してスポーツジムを持っていたんですよ。そのスポーツジムの二階で、普段は物置のようなところにベッドとかマットレスを敷いて泊まっていました。

だからそこにいる時は、キックやフィジカルの練習もそこでできましたね。

ーー欧州というと何かと渡航費や滞在費がかかりそうですが、どうされたのでしょう?

その時はそんなにお金かからなかったですね。滞在費はゼロですし、航空券とあと少し使ったくらいですね。

ーー食費はどうしたのでしょうか?

食費はコリンさんと一緒に食事に行ってごちそうしてくれたりとか、トレーナーのサムという方がスーパー行った時に一緒に買ってくれたりとか、凄く良くしてくれました。何でこの人たちは、よく分からない日本人にこんなに良くしてくれるんだろうなと不思議でした。

あとは物価が高いと聞いていたんですけど、食パンが凄く安いんですよ。食パンを買ってきて、チーズを乗せたのを三食サンドイッチにしたりだとか。途中、気が狂いそうになりましたけど(笑)

ーー廣野選手といえばグルメなのでそれは意外でした。

いや、もう全然。ずっとひたすらサンドイッチですよ。たまに中に挟むものを変えたりして。

ーーイギリスに行かれた時は結構美味しそうなものがブログに出ていましたけど。

(欧州修行中の廣野のブログにはいかにも美味しそうなスイーツが頻繁に登場していたが…)

イギリスといっても外食したのは2、3回だけですよ。あとはスーパーに行って、冷凍食品とかを買ってきて。あとはスムージーですね。朝ご飯は全部スムージーとかにして。

あとはたまにデービッド(※後述するボクシングトレーナーのこと)が練習終わりにオーガニックライスを作ってくれたりしました。

ーー日本と比べてどちらが食事が美味しかったですか?

個人的には量が多いので、海外の方が食事はあってると思いますね。日本だと何人前くらいの量が、向こうの1人前なので。だから海外行ったら太っちゃいそうですけど。

ーーイギリスは食事が美味しくないというのは良く耳にしますが。

そういうイメージありますけど、全然美味しかったです。

今まで何カ国か行って、口に合わなかったことがなかったです。

ーーそういえば廣野選手は目白ジムから日本に来た選手のセコンドについていますが、交友は深いのでしょうか?

スタウロス(※K-1に出場)の場合は全然交友はなくて、セコンドに付いた日が初対面だったくらいです。サンタナ(※REBELSに出場)とは何回も一緒に練習してます。スパーリングも何度かやったこともありますし。

(廣野はK-1王者の大雅からKO勝利を収めたスタウロスのセコンドにもついていた)

ーーマナート会長から頼まれたのでしょうか?

自分から「必要ならいつでも」と伝えてて。それで仲を取り持ってくれる人がいて、アンドレ(・マナート)さんが必要だからということで入りましたね。

ーーそこは日本の戦い方を知ってることを評価されたのでしょうか?

というよりも日本語が分かるからじゃないですか。現地の人がいたほうが良いという判断です。

ーーなるほど、元々は特別なコネがあったわけじゃないんですね。

全然なかったですよ。一番先に来たのが目白だったということで、目白ジムに行ったというだけです。

ーー言葉面で言うと、英語やオランダ語は話せるのでしょうか?

全然喋れないです。イギリスでデービッドといた時に、ずっと24時間一緒だったので、そのおかげで英語は少しマシになったなというのはありますけど。

ーー単語から分からない状態だったんですか?

言ってることは何となく分かるんですよ。ただこちらの伝えたいことが上手く言葉にできないというのが最初のオランダの時からありましたね。リスニングも聞き取れてるかな、というくらいのニュアンスくらいですけどね。

ーーそれにしても何も分からない状態でオランダ行っていきなり生活するのって大変ですよね。

でも良いところですよ。最初行ったのが夏だったんです。夏行ったときは昼間がずっと長くて、暗くなるのが4時間くらいしかないんです。

だからずっと昼間のような感じで、凄く1日を得した気分になるというか。真夏ですけど涼しくて、日本で言う軽井沢みたいな環境だったから過ごしやすかったです。

ーー夏でも蒸し蒸ししていないんですね。

してないです。一番良い時期に行ったみたいですけど。2回目に行ったときは真冬に行って、手が痛くなるくらい凍てつくような寒さでした。

ーーそういえば武者修行といえば、イギリスでのデービッドについて聞きたいのですが、あんなにキャラクターの濃いトレーナーは初めて見ました。

キャラクターが濃くて面白いですよね。

(廣野がトーナメントに挑む際に同行していたデービッドトレーナー。どことなくシュールなキャラクター性が一部で反響を呼んだ。)

ーーどういった経緯で知り合ったんですか?

まずフィリピンのボクシングジムに練習に行こうとなった時に、橋渡ししてくれる日本人の方のホームページがあったんですよ。

それで連絡して知り合えるようになって、その方が面倒を見てるボクサーで、イギリスでトレーナーをしていたのがデービッドだったんです。

最初はボクシングの練習に行く時はアメリカを考えていたんですけど、アメリカに関してはいちいち練習代も高いし、移動が大変というのもありますし。トレーナーのコネがないとただ行って練習するだけになってしまうので、イギリスにしたんです。

ーーそれでデービッドトレーナーは、イギリスの国内王者を育てているという話を聞きました。

あれは少し勘違いしていて、オリンピック代表選手をたくさん育てているわけではなくて、オリンピック代表の選手のサブトレーナーだったみたいです。でもイギリス王者は一人育てたみたいです。

ーー教え方は一味違うのでしょうか?

独特なんですよ。それはデービッドだけではなくて、他の選手の練習を見ていてもそうで、メイウェザーの練習みたいですね。リズミカルな攻防一体のミットでした。

日本だと型を繰り返すことが多いんですけど、避けながら打ったりとかそういったミットが多かったですね。

ーー廣野選手はブロックの時に手を細かく動かしますけど、そういった練習で身についたものなのでしょうか?

というよりも僕はもともとディフェンスをかなり重要視していて、海外勢はパワーもあるのでまともに貰うと勝てないなということで、貰わないことを第一に初期からずっとやっていたので。

ーーデービッドはキャラクターが濃いことで評判ですが、どんな感じだったのでしょうか?

例えばこっちが真剣にトレーニングしている時に、パッと見たらデービッドも凄く真剣な顔をしているんですよ。何見てるんだろうなと携帯を見たら、思いっきりエロ画像とか見てるんです。

ーーそれって練習中ですよね?

練習中ですよ。この人大丈夫かなって思うことが多いですね。普段はニヤニヤ喋ってるときに、凄く真剣な顔をしてるから次のトレーニングのことでも考えてるのかと思うじゃないですか。何してるのかと見たら、「今携帯を見てリラックスしてるんだ」と言ってて。「大丈夫かな、この人?」と思いましたね(笑)

ーーブログで見た時には独特な練習をしていましたね。

そうですよね、ベストキッドみたいです。棒を避けたりだとか。

ーー屋外でもやっていました。

彼は普通のジムに行って、サンドバックやミットを叩くのは誰でもやってることだからあまり意味が無いと言ってました。それよりも外でフィジカルをやったりとか、違うことをやることに意味があるんだと。

ーーその時期はボクシングだけやっていたんですか?

そうですね、ボクシングだけでした。

ーーK-1トーナメント前ということでチャレンジですよね。普通は日ごとにやったり、午後だけやったりとかになると思いますが。

なかなか両方というのは難しくて、どっちも中途半端になっちゃうので。片方だけしっかり集中してやる方が良いんじゃないかと思ったんです。

ーー試合近くまで蹴りなしでずっとやることに不安はありませんでした?

やっぱり思うところはありますけど、そこは分けて考えて。パンチとフィジカルコンディショニングを1ヶ月をやって、イタリアではキックのスパーリングだけをやりました。

ーーその時にペトロシアンと練習していましたけど、ペトロシアンといえば神秘的な存在でもありますよね。

(K-1 MAXで無敵の強さを誇ったジョルジオ・ペトロシアンともスパーリングを重ねた。クレジット: By null (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons)

イタリアでやりましたね。ペトロシアンはもちろん凄く強いんですけど、普通の人間だなと思いましたね。最初のイメージは攻撃がカスらないというものでしたが。

ーーペトロシアンは同じ人間じゃないとすら感じます。

と思うじゃないですか、攻撃が当たらないというイメージも。でも攻撃は全然当たりますね。

自分の読みとしては、ペトロシアンに勝てるとすればサウスポーか、リスティみたいな身体能力が高いスイッチヒッターかなと思っていたんですけど、その読みは当たってると思いますね。

ーーペトロシアンが攻撃を貰うというのは意外です。かすりもしないものかと。

でもサウスポー同士だと結構貰ってますよね。サウスポーだと全体的に距離が近くなるというのがあるので。

スパーリングやっていても当たるし、その辺は普通の選手です。だけどやっぱり上手くて何でもできる選手なんです。

ーー話を戻してデービッドトレーナーについてですが、セコンドについた時はSNSの時の顔ではなかったです。

真剣な顔をしてましたよね。あれが本当のデービッドなのかどうか分からないですけど、ボクシングのときだけは真面目なんですよ。その他、真面目な顔をしている時はふざけたことを考えてるときで、エロ画像を見てるときが真剣なんです。

ーー日本に戻ってきたからはデービッドと「いきなりステーキ」に行ってましたが、あれは減量として大丈夫だったんですか?

あれはいつもの減量方法なんです。珍しいと思うかもしれません。

ーーどういう減量方法なんでしょうか?

普段からまず節制していることが大きいと思います。今回は5kgくらいですけど、普段は7、8kgくらいですね。

でも全て脂肪で落とすわけではなくて、水抜きで落とすことも考えると、実質食事で落ちる分って3、4kgくらいじゃないですか。

「いきなりステーキ」というのは、あの時期というのはなるべく塩分を取らないようにしているんです。体重がある程度落ちたら塩分をそこまで抜くと体に良くないので、塩分を徐々に戻すために、ステーキに少し塩をかけたらおいしいという。塩がなくてもおいしいのがステーキという考えです。

(廣野の減量法は独特で、試合直前にも「いきなりステーキ」を食しながら体重を落としていく)

ーーSNSに写真をあげているから減量中でもグルメだなあと思ったんですが、毎日そういうわけではないですよね。

違いますよ。減量中のときのほうが食べられるものが限られるので、むしろお金かかりますね。どうしても減量中で塩抜きの時期だったり、あとは生魚は食中毒があるので食べられないし。どうやって塩分を戻していくかと考えると、ステーキが体のためになるんじゃないかと思ってのことです。

ーーデービッドが減量中の選手の前で食べるシリーズがありましたが。

そこは気にしなくて、好きなもの食べていいよと。「悪いな」とか言いながらいつもチョコパイとか食べてました。逆に気を使われる方がアレかなと。

ーー今はデービッドとはどういった関係なのでしょう?

今も頻繁に連絡取ってますよ。こういったトレーニングをやったほうが良いと言ってくるので、それをやって疑問があったら色々聞いたりとか。

今回も呼ぶ予定の話があったんですけど、向こうも予定があって来れなくなっちゃって。

ーーここで勝てば、来年に来る可能性もあると。

来るようにさせないとダメですよね。多分来るんじゃないんですか。期待しておいてください。

ーーそれではようやく本題に入って、廣野選手が2016年からK-1・Krushに出場されたことについてお聞きします。

最初は2016年3月のK-1 -65kgの日本代表決定戦のワンマッチでした。

ーートーナメントで山崎選手が優勝した時ですよね。

あれは判定勝利でしたが、酷い試合でしたね。倒せていないですし、クリンチばかりの展開になっちゃったし、昔の自分のいつも通りの試合というか。

ーーK-1に出るに当たってKOするという意識はありましたか?

それはありましたね。K-1はやっぱりKOしてこそじゃないですか。

ーーその後、Krushで秋元選手との試合ですよね。

秋元くんの時には珍しくKOしたんです。彼は松倉くんにも勝ってるので、自分の中ではこれがKrushの挑戦者決定戦なのかなというイメージでした。

ーー秋元選手ってあのセルゲイ・アダムチャックと判定2-1まで行ってて何気に凄いですよね。

試合はいつも通りでしたね。むしろ彼は自分の距離に付き合ってくるタイプの選手なので、上手く行けばもっと早く失速させられるかなとは思いましたが、案の定失速しましたね。

ーーあれはプラン通りでした?

そうですね。ただあえてパンチを打たせた時に飛び膝を合わせたりだとか、対策は練られてるなという感じはしましたけど。

ーー試合は珍しいフィニッシュシーンでした。

そうですよね、何で倒したか分からないという。

ーー決まり手はボディーへの膝蹴りなんでしょうか?

決まり手は多分、酸欠ですよ。最後の膝蹴りは入っていないか、入りは浅かったかな。試合のインパクトは少しは残せたかなとは思いました。

ーーさらに松倉選手にも勝利して、ピケオーの持つ70kgタイトルに挑戦します。

その時には外人と戦えるのなら自分しかいないかなとは思ってました。

(Krush王者のジョーダン・ピケオー。廣野や日菜太をはじめとした日本人トップファイターと次々と破っている。(C) M-1 Sports Media)

ーーその辺りはタフさがあるからということでしょうか?

自分は実際タフじゃないんですよ。むしろタフじゃないからディフェンスを練習しているんです。

ーー打たれ強いわけではないんですか?

全然打たれ強くないですよ。

ーーピケオーとの試合でも顔面に膝を貰っていても倒れなかったので、打たれ強いなと思ってみていました。

あれは貰っているように見えて貰っていないんだと思います。

ーーピケオーと対峙してどうでした?

「小さっ」と思いました。普段スパーリングしているのが大きい選手ばかりなので。

ーーその時には欧州行っていたんですか?

そうですね。去年の12月に行っていて、(ヘビー級の)ロエル・マナートとかとスパーリングしていたんですよ。あれは初めてパワー差というのを思わされたんですよね。

ーー今時70kgとヘビー級が一緒に練習するってあるんですね。

アンドレさん分かってるのかなと。何度も試合は70kgだと言ってるんですけど、身長が日本人の中では大きいからなのか、ヘビー級グループに入れられてスパーリングしてましたね。

ーーだから小さいと思ったんですね。日本人キラーのピケオーといざ拳を交えてみてどうでした?

的確に急所を捉えてくるタイプでしたね。

ーーイメージ的にはパワーファイターですが。

むしろパワーは感じなくて、しっかり打ち抜いてくるというタイプです。

1Rは距離を詰めなくて、2Rにどうしようかなと思って距離を詰めたんですけど、相手がショートで回転が早かったなという印象です。

ーー膝蹴りも貰っているのに倒れなかったのが、改めてタフさを感じさせました。

ほとんどの攻撃が見えているというのがあると思います。見えない攻撃は倒れてしまうので、全ての攻撃を見るようにしていて。相手の攻撃をしっかり見るというのは常に意識しています。

ーー廣野選手のディフェンスというと手がよく動くなと。

そうです。相手の動きに合わせてブロッキングをずらすという。

ーーそこが不倒王たるゆえんですね。

不倒王…どうなんですかね(笑)

ーーでもKO負けしたことがないんですよね。

ないです。

ーー70kg級で戦いながらKO負けをしてないというのが凄いです。

打たれ強いというのが先行すると思うんですけど、そんなことはないんです。1回だけダウンしたことはあるんですけどね。

ーーピケオー戦は敗れはしましたが、スタイルは貫きましたよね。

その時に思ったのが、あの戦い方は負けはしないけど、勝てないなと。あのファイトスタイルにプラスアルファしていこうと思ったんです。

入っても入らなくてもいけるよう、どの距離でも戦えることを意識しました。中間距離の攻防を増やしていこうとなったのが、(K-1での)ダルベック戦ですね。

ーーサニー・ダルベック戦はカットで敗れましたが、ダルベックの印象はどうでした?

ダルベックはやっぱり小さいですよね。70kgの選手ではないですよ。体の力もないんですけど、ただ左の強打があってパンチが強いなと。

ーー左膝でのカットでのTKO負けでした。

攻撃に意識が行き過ぎていて、あの結果になったんじゃないですかね。それとダルベックがボディーにテンカオを放ってきて少し効いたんですけど、別に倒れるほどじゃないからこれにパンチ合わせて行こうと思いましたが、その考えが少し甘かった。

そこで上下に膝を打ち分けてくるという発想があれば良かったなというのがありますね。

ーートーナメントを終えて、K-1はトーナメントを2年に1度ほどのスパンで開催しますが、その後の目標をどのように切り替えましたか?

冷静に自分を見つめた時に、ダルベックって世界から見たら中堅なんですよ。さらにアラゾフが飛び抜けていることを考えた時に、あと何年できるか分からないという現状を見てキツイなと思ったんです。

それでどうしようかなと考えたのですが、可能性が限りなくゼロに近づいただけで、ゼロではないかなと、だからもう少しやってみようかなとなりました。

(日菜太との試合に勝利すれば対戦することになるアラゾフは、世界でも最も勢いのあるファイターだ。クレジット: (C) M-1 Sports Media)

ーーどうしたら世界のトップになれるという可能性を見出したのでしょうか?

やっぱり他の選手になくて自分にあるのは、攻撃をもらわない技術や目の良さなので、それを活かすことですね。

まだ模索中なんですけどね。「俺はこのスタイルだ」というものを作りたくはないんです。作るとそこで成長が止まってしまうので。常に成長していいたくて、ゴールがないままずっと走り続けてたいというのはあります。

ーーどの競技でも何かを変えると最初はパフォーマンスが落ちますけど、そこに焦りはありませんでしたか?

それは仕方ないことですよね、多少は。前回で言えば少し変えたから失敗したんですけど、それで全てが否定されるわけではないですし。

何かチャレンジした時に必ず良い結果が出るとは限らないので。

ーー難しいですよね。

難しいです。やればやるほど難しいなと思います。分からないですよね、何が正解かというのは。

ーーK-1に話を戻します。挑戦者決定戦が行われると聞いた時はどんな心境でしたか?

僕はおいしいなと思いました。日本人と試合をしたいと思うことはあんまりないんですけど、日菜太選手は評価も高いですし、勝ったら得るものしかないなと思ったので。

(対戦する日菜太も「廣野からしたらおいしい試合」と話していた。(C) M-1 Sports Media)

ーー日菜太選手とは既に対戦されていて、判定1-2で敗れてますが初対戦はどうでした?

日菜太選手といえば蹴りのイメージがあるけど、パンチの方が強かったなと。意外なことに蹴りよりパンチの方が印象に残ってます。

公開練習の時にも言いましたが、これはやった選手にしか分からないんじゃないですかね。あとは自分がサウスポーだから蹴りの威力が伝わりづらかったというのもあると思いますよ。

ーー日菜太戦に向けて特別に負けたくないという意識はありますか?

それは誰とやっても負けたくないですよ、日菜太選手にも自分にも。

ただ目先の対戦相手にはそれほど興味が無いんです。どれだけ自分が思っている理想に近づいているのが大事で、相手がどうで何をしていくのかというよりも、自分がどのように仕上がって何をするのか、ということに格闘技はそれに尽きるかなと。

ーーそれでも対策を練ることで勝率が上がることがあるかもしれません。

自分の場合は目先の試合に勝つこともそうですが、誰とやっても勝てるスタイルを追求しいて、そうすれば自ずと結果もついていくんじゃないかと思っています。

逆にいうとその場しのぎで、その相手に勝つための練習はできないという思いです。

ーー王者になるという目標から逆算してのことでしょうか?

逆算して、誰とやっても勝てるようにということですね。口で言うのは簡単ですけど。

ーー気になったのは廣野選手はサウスポーのセオリーとは反対のスタイルですよね。ナチュラルサウスポーですか?

生まれつき左利きです。ただ世界的に見てもこのスタイルって他にいないんですよね。

ーーサウスポーというと左のカウンターを取ったりするのがセオリーですが、そこをやらないのが廣野選手の特徴に感じます。

反対のことをやってますよね。ただ人のやっていないことをやるというのが勝機になると見ています。今はどの距離で戦っても自分の能力を出し切ることをイメージして練習してますね。

ーーその一方で誰と対戦しても相性が出ないで自分のスタイルが崩れないという。

相性はジャンケンみたいなものですけど、そのパターンを作らないということですよね。現実を度外視して考えた時に、グー・チョキ・パーがあって、どの手に対しても勝てないと最強とは言えないのではないかと思ったんです。だからどの相手と試合をしても勝てるようにというのは意識してます。

ーー日菜太選手に勝ったらアラゾフに挑戦ということですが。

やっぱりアラゾフに挑戦するということを考えると、日本人相手に泥試合をやっているようではキツイなと。客観的に見てもキツイと思うんです。

だから差をつけて勝たないといけない。今の自分がどれくらい行けるのかという、一つの指標になると思っていて、自分の可能性が結果として出てくるんじゃないかと。

ーー年齢的には33才ということですが、まだ進化できると。

そう思います。フィジカル的に落ちたというのはないですし。自分の長所を組み合わせたスタイルに磨き上げているので、次戦ではさらに良くなった姿をお見せできると思います。

ーーその先にいるアラゾフはK-1の他の外国勢と比べても頭一つ抜けています。

そうですね、彼だけ頭2つくらい抜けています。トーナメントをやっているときも思いました。彼だけ群を抜いていると。アラゾフに勝てる選手は世界を見渡してもそうはいない。

ーーK-1のベルトについて思うところはありますか?

世界で最もレベルが高い階級で日本人が取ることに意味があるのかなと。日本人で魔裟斗さん以外は取れていないですし、誰もやっていないことをやりたいですよね。

そうでないと価値がないというか、自分が存在している価値がないんじゃないかとも。誰もいけないところに行きたいというモチベーションでやってます。

そう考えると相当残り時間は少ないし、確率は限りなくゼロに近いと思うんですけど、ゼロではないので。その可能性を少しでも上げていこうという思いです。

ーー廣野選手は実力的にはもっと注目されるべき選手だと思います。

次回はもっと見たくなるような試合をしますよ。

ーーKOについては狙いますか?

もちろんそうですけど、流れの中でフィニッシュできればと考えています。

自分が求めている内容、思っている通りに試合が運べばお客さんが求めているものと一致するはずなので。目先の結果よりも、いかに良い内容でこなして、その先に待っているはずのゴールを目指したいなと思います。

ーー2017年にK-1は飛躍しましたが、その最後の試合に当たります。

終わり良ければ全て良しなので、しっかり締めたいと思います。

廣野祐プロフィール

名前: 廣野 祐
生年月日: 1984年11月6日 (33才)
身長・体重 : 181cm・70kg

2006年にプロデビューし、その2年後となる2008年にはJ-NETWORKでミドル級王座を獲得した。そして2009年にはK-1 MAXの出場権をかけたKrushのトーナメントに出場するも、決勝で中島弘貴に敗れたことでK-1出場は叶わなかった。

その後はスーパーウェルター級の日本人トップ選手として活躍し、2016年から新生K-1に参戦。K-1・Krushと日本人相手には3連勝を収めており、同じく日本人相手に連勝を続けている日菜太との対戦は日本人頂上決戦との呼び声も高い。

日菜太に勝利すればK-1タイトル挑戦が決まる大一番を12月27日に控えている。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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この記事へのコメント()

Girl 2197992 960 720
ガレージキッド
2017/12/24 15:48

いきなりステーキで減量・・・??

Missing avatar
匿名ユーザー
2017/12/24 19:52

今回のK-1は正直カードも弱いしあまり話題にはなってないけど、廣野と日菜太の対戦はK-1以前からのストーリーを踏まえると感慨深いものがあるよね。こういった選手も輝ける舞台を用意してる新生K-1は凄いと思う。

Missing avatar
匿名ユーザー
2017/12/26 10:41

対戦カードが弱いだけで出場選手は悪くない感じ。
K-1と言われると期待外れなだけで、日本人限定、後楽園ホールって条件ではそこまで悪くない大会だと思う。
それならKrushでやれって言われるのも分かるけど。

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