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なぜ格闘家の現役復帰は多い?アーツ、ヒョードルなどレジェンド選手の多くは引退宣言から復帰戦を経験。

2017/04/27 17:41

By Paulblank (http://www.postproduktie.nl/bekend.htm (self made)) [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons

先日ピーター・アーツがオランダで引退試合を行ったことは記憶に新しいですが、これまでレジェンドと呼ばれる選手はたびたび現役に復帰して試合をこなしてきました。格闘技ではなぜこれほどまで引退を撤回し、復帰をする選手が多いのか、他競技と比較してみました。

レジェンドファイターのほとんどが現役復帰を経験

先日ピーター・アーツがオランダで引退試合を行ったことが各メディアで報道されましたが、その時に「アーツは何度引退するんだ」という反応がSNS上で見られました。

確かにアーツといえば2012年にベルギーで行われたタイロン・スポーン戦を前に引退を表明。さらに2013年には東京で行われたGlory大会が「大引退」として大々的に宣伝されており、これで実に3度目の引退試合という触れ込みになっています。

しかしこれはアーツだけに見られるものではなく、特にK-1レジェンドと呼ばれる選手のほとんどは現役引退後に復帰戦を行っています。

例えばK-1で4度優勝したアーネスト・ホーストは2014年に現役復帰し2戦2勝(ピーター・アーツにも勝利!)という成績を残しており、3度優勝したレミー・ボンヤスキーも2012年の復帰に続いて、間もなく2度目の現役復帰を果たそうとしています。

他にもステファン・レコがバンナを迎えて2011年に引退試合を行いましたが、数週間後には早くも撤回して現役復帰。最近ではダニエル・ギタも事実上の引退状態から、現役復帰に向けて練習を再開したことが発表されました。

このようにK-1系のレジェンドファイターを見ると、現役復帰をせずにすんなりと引退するという選手は稀で、例外的にMMA団体の代表を務めるレイ・セフォーと、心臓の病が原因で引退したセーム・シュルトは現役復帰を行っていません。

MMA選手の復帰も多い

もちろんこれはK-1だけではなく、MMAのレジェンドファイターにも同じことが言えます。

エメリヤーエンコ・ヒョードルは2012年に母国ロシアでペドロ・ヒーゾを相手に引退試合を行い、この上ない形で有終の美を飾りました。引退後も充実したキャリアが約束されていたものの、それを覆して2015年大晦日にRIZINで復帰戦を行ったのは周知の通りです。

またミルコ・クロコップも一度2011年にUFCとの契約満了をもって引退を表明。しかし1ヶ月後にK-1で現役復帰を宣言し、翌年にはIGFでMMAの試合をこなしています。

その後UFCに復帰し、ドーピング規定に違反していたことが判明したタイミングで再度引退を表明するも、翌年にはRIZINで現役復帰。昨年大晦日には無差別級トーナメントに優勝し、3度目の引退表明を行っています。

その他ヴァンダレイ・シウバやヒース・ヒーリングなどを見ても分かるように、MMAでのレジェンド選手もまた、現役復帰を経験するのが既定路線のようになっています。

他競技で復帰することは稀

一方で野球やサッカーといった球技のプロ選手が現役復帰することは極めて稀です。

プロ野球選手では、元メジャーリーガー小宮山悟のように所属球団のない「浪人生活」を経て、再び所属球団を得るという選手はいるものの、一度自らの意思で引退した後に復帰した選手はほとんど存在しません。

簡単に調べてみたところ、有力選手では「フィークボールの神様」こと杉下茂、大洋ホエールズの元エースである島田源太郎くらいしか見つかりませんでした。

サッカーでも復帰したケースは少ない

またワールドワイドに最も行われているサッカーでも、有力選手が現役復帰することはほとんどありません。

最近話題になったものでは、Jリーグ黎明期に活躍した「クモ男」シジマールが、コーチを務める藤枝MYFCのGKが人員不足につき選手登録されたということがあります。シジマールは54才という異例の事態ですが、選手登録されたのみで今のところ出場には至っていません。

またゴン中山も2012年に「一線を退く」として事実上の引退状態にありましたが、2015年にアスルクラロ沼津へ練習参加したことで現役復帰。こちらも選手登録されているものの、JFLを含めて公式試合には出場していません。

海外ではスキンヘッドがトレードマーク、「小さな魔法使い」ことベロンが2度現役復帰を経験しています。(1998年W杯で日本とも対戦しています。)

ベロンは2011年に引退し、2013年に復帰。2016年にもチームの「選手兼会長」として現役復帰。シジマールやゴン中山と違い、こちらは2017年に1試合だけ出場しています。

ただし有力選手の現役復帰のケースはやはりサッカーでも少なく、仮に復帰しても試合出場にこぎつけるのは至難と言えるでしょう。

なぜ格闘家の現役復帰は多いのか

ではなぜ格闘家はここまで現役復帰を経験するケースが多いのでしょうか。まず格闘技は練習環境を確保し、パフォーマンスを戻す機会が得やすいことが特徴的です。

例えば野球の場合、一度プロ球団から離れてしまうと、質の高い練習を行うことが極めて難しくなります。ピッチングマシーンで速い球を打つ練習をしようにも、ピッチャーとキャッチャーがその都度で配給を変えてくる状況を再現することはできませんし、連携を交えた実践的なフィールディングも所属球団がなければ行うことはできません。

格闘技の場合は自発的に高いレベルの練習に身をおくことが可能で、特にレジェンドクラスの選手とならば世界トップレベルの環境を用意することも難しくないでしょう。実際にパフォーマンスが戻るかは定かではないにせよ、それだけの機会を得られるというのはやはり大きなファクターです。

また格闘技は選手のパフォーマンスよりも、ネームバリューに左右されるところが大きく、例えばゴン中山ほどの選手が現役復帰の意思を示したならば、格闘技ではいずれかの団体が試合をする機会を提供してくれるでしょう。

しかしチームスポーツでは何よりもチームの勝利に価値が集約されるため、なかなかネームバリュー優先で選手を起用するのが難しい状況にあります。

ネット上では「客寄せパンダ」と揶揄されることのある三浦知良ですが、実は49歳だった昨シーズンは639分と約7試合の出場時間で2得点あげているように、全くもってチームに貢献していないというわけでもないのです。

強いて言えば、メジャーで547本を放ったマニー・ラミレスが、四国アイランドリーグで特権的な地位を得ています。ただしこれは四国アイランドリーグの集客力が乏しく、ラミレスの状態がいかなるものでも、その注目度に頼った方が良いという経営判断に基づいており、安定した集客力をもつプロ野球では当然まかり通りません。

このようにトップチームと契約していなければ練習環境を確保できないチームスポーツとの違いや、ネームバリューの高い選手が重宝される格闘技の興行方針が、現役復帰を可能にしているのではないでしょうか。

それとは別に限界を感じて引退しても、時間が経つとまた選手に戻りたくなるような、理屈を超越した特別な高揚感が格闘技にはあるのかもしれません。

引き際を強く意識し、最盛期のまま引退した魔裟斗ですら大晦日に2年続けてスペシャルマッチをこなすなど、格闘家の引退と復帰には当人にしか分からない感覚が伴っているように思われます。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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