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「強くなるための舞台として巌流島で戦う」菊野克紀がMMAではなく巌流島で戦い続ける理由とは

2018/01/01 21:04

2018年1月3日に開催される巌流島のメインイベントにて小見川道大と対戦する菊野克紀。RIZINからのオファーがありながらも巌流島を選択する、絶対的エースの菊野克紀が巌流島で戦い続ける理由とは。

巌流島が1月3日、舞浜アンフィシアターにて『巌流島 OUT ENEMY 2018 in MAIHAMA─謹賀新年、宿敵同士の果し合』を開催する。三が日の正月気分覚めやらぬ中ではあるが、新年1発目の格闘技興行として巌流島が2018年の到来を告げることになる。

同イベントにはジミー・アンブリッツの再登場や鈴川真一のデビュー戦など、見所盛りだくさんのラインナップとなっているが、中でも注目はメイン・イベントの『菊野克紀 vs 小見川道大』だろう。

共に柔道、空手という武道をバックボーンに、MMAでは日本のメジャー団体、そして世界最高峰のUFCでも戦ってきた両者だが、現在は巌流島に継続参戦し、エースとも言える地位を築いた。

中でも菊野克紀は巌流島の絶対的なエースとして君臨しており、2016年10月には小見川と対戦し、この時には一本勝利を収めている。

イベントのテーマは『宿敵同士の果し合』となっており、菊野と小見川の対戦ほどこのテーマを体現している組み合わせはない。

MMAで日本トップレベルの実力を築いた菊野には、RIZINも関心を示していることが伝えられている。そんな状況にあっても、なぜ菊野は巌流島で戦い続けるのだろうか。そして宿敵である小見川都の対戦についても尋ねてみた。

「強くなるための舞台」として巌流島で戦う

ーーまず菊野選手はなぜ巌流島という新しい舞台に参戦することになったのでしょうか?

最初は2014年に巌流島の旗揚げに向けた会議が行われて、谷川さんから声をかけてもらったんですよ。

「菊野くんは自分たちのやろうとしていることの世界観にぴったりだから、ぜひ参加して貰いたい」と。

でも僕はその頃はUFCとの契約があったので出場はできなかったんですけど、それでも会議には参加して欲しいということで、会議には参加したのが始まりです。

ーー巌流島の旗揚げ会議とはフジテレビONEで放送されていたものですよね。

そうですね。千原ジュニアさんが司会をされていた番組です。

そこでルールについての議論やどんな選手に出場して欲しいか僕なりの意見も言いましたし、面白そうな舞台になりそうだと思いました。

ーー当初から異種格闘技戦を押し出した新イベントという印象もありましたが、菊野選手はどの部分に惹かれたのでしょうか?

僕は柔道と極真空手と沖縄拳法空手を経験していましたし、武道武術というのはとても好きでしたし、漫画も好きなので異種格闘技戦とかそういうものには興味がありました。

僕はもともと弱虫の自分が嫌いで、強くなりたくて柔道を始めました。これまで学んできた柔道、極真空手、総合格闘技、沖縄拳法空手は全て強くなるための、自分のことを好きになるための手段であって目的ではないんです。

だから総合格闘技じゃなくてはいけないとか、沖縄拳法空手じゃなくてはいけないとかという発想はないんですよ。

その強くなるための舞台として、そして僕のヒーローの夢に進む道として巌流島は面白いなと感じました。

ーー総合格闘技で長年活躍されていたのでこだわりがあるのかとも感じていました。

総合格闘技を愛してますし、感謝しています。

僕が総合格闘技を志したのは、高校三年生で今後の人生について悩んでいた時に総合格闘技のPRIDEを見て、これがまさに強さの象徴だと感じたからです。

結局目的は強くなることなんです。

それでですね、やればやるほど格闘技というものはルールの制約を感じるようになるわけです。強くなって色々なものを理解するほど、ちょっと状況が変わるだけで強さは変わるなと。

金網とリングでも変わりますし、ヒジのありなしでも変わる。もっといえば目つき、金的、噛みつきをやったらどうなるのか、武器がありだったらどうなるのかと強さを求めていくとキリがないんですよ。

結局、競技のルールの中で強さを競うしかないんですけど、じゃあ最強って何なの?強さって何なの?っていうところになってしまうわけなんですよ。

なので僕は競技という枠にこだわりがないんです。強さを求めているから。

野球とかサッカーはゲームですからそんなこと気にする必要は無いと思うんですけど、ファイトである格闘技は強さを求めるので永遠のテーマでありジレンマです。

ーーそれが巌流島という舞台に戦う場所を変えた理由につながるのでしょうか?

巌流島も巌流島ルールの中で競う競技の一つではあります。

でも実戦に近いルールだとは思います。

道着を着ることで日常の着衣の状態を再現し、押し出しがあることで階段や道路、障害物などの環境利用を再現し、寝技が15秒に制限されることで噛みつき、引っ掻き、目潰し、対複数人数による密着状態での硬直の危険の回避になります。

そして実戦性が高いからこそ体重無差別が可能になるし、スタミナ勝負の戦いになることが少ないので歳を重ねても勝負ができるんですよ。

そこに魅力を感じましたね。あと単純に面白いです!

硬直が無いことも押し出しの緊張感も、そして世界観も。

ーー話は戻りますが、実際に巌流島に出場される経緯は?

僕は2年前にUFCで2連敗してUFCからリリースされました。2016年の3月に所属していたアライアンスというジムを離れて、その1ヶ月後くらいのタイミングでした。

UFCは独占契約で2015年の9月に負けてから半年以上も試合が無いまま待たされて、精神的にも経済的にも苦しい時期でした。

そこから心機一転ですよね。UFCとの契約も無くなったので、これからどうしようかなって考えた時に巌流島は凄く魅力的でした。

一度は古巣のDEEPで試合をしたいと考えていたので、それを挟んでからの巌流島参戦という流れになりました。

ーーそのタイミングであればMMAでいえばRIZINも盛り上がって来ていましたよね。RIZINの榊原代表も菊野選手にはオファーを出したことを明かしていましたが。

ありましたよ。とても魅力的でした。テレビ放映もあったし、資本力があるから条件も悪くなかったので。

だからずっと考えてました。今年の7月くらいまではRIZINも視野に入れていました。

去年の年末にも声をかけて頂いたんですが、1月3日の巌流島で僕がUFCでKO負けしたケビン・ソウザと再戦させてもらえるとのことで巌流島を選びました。谷川さんも凄い相手を連れてきてくれましたし、巌流島からは凄く誠意を感じていましたので。

でも巌流島とRIZINの条件や状況、今後のことなども含めて常にフェアに考えていました。

ーー菊野選手を動かしたのは巌流島サイドの誠意だったんですね。

それはあります。僕をメインとして使ってくれたり、ケビン・ソウザ戦や無差別など僕の想いに応えてくれましたので。でも何より巌流島の武道精神の発信、『親が子どもに見せたい格闘技』という志が僕の夢に重なったというのが大きいですね。

巌流島という舞台は僕のヒーロー修行の場だと思っています。

武道というのは、逞しく幸せに生きるための道であり、カッコいい生き方を学ぶ道だと思うんです。

強さを学ぶのが武術だとしたら、武道っていうのはカッコいい生き方を学ぶもの。そして武道精神の究極がヒーローだと思うんです。

ただRIZINに出て有名になって発信力を身につけるというのもヒーローへの道として魅力的ではあったので、両方に出ようと思い谷川さんと話していました。

巌流島とタイミング的に被らなければRIZINにも出たいですと。それに対しで谷川さんもノーとは言わなかったですね。

谷川さんは「もちろん巌流島に集中してほしいけど、菊野選手がどうしてもというならそれは応援します。」と言ってくれました。

実は巌流島に専念しようと思った出来事が今年の6月に起きました。自分は今年の7月にDEEPに出る予定だったんですよ。でも1ヶ月くらい前に骨折してしまいました。

5月にジミー・アンブリッツ戦があって、そこで僕が足が裂けてしまったんですけど、その怪我はすぐに治って、そこで次はMMAも大好きだからやりたいなって。

それでその時は7月30日にRIZINがあったんですよ。でもその時はオファーを頂くことができなかったので、じゃあMMAでお世話になってきたDEEPに出ようと思って試合を組んでもらいました。

でも6月に足を骨折してしまった。疲労骨折でした。

ビックリしましたね。MMAの練習の後に気がついたら足が折れていたんですよ。特に痛みがあったわけじゃなくて、ジムから駅まで歩いている途中に、「あれ?痛くて歩けねえ」ってなって。

それで医者に行ったら折れているということで。これは何か意味があるのかなって。

だって一年ぶりにMMAに出ようと思ってMMAのための練習してたら原因不明の疲労骨折で出れなくなったんですよ。これは巌流島に専念しろってことなのかなって…。

去年の6月にDEEPに出て、今年の7月にDEEPに出ようとした。その間の13ヶ月間はMMAのための練習ではなく巌流島のための練習をしていましたから。

ーー巌流島の練習とMMAの練習って違うんですか?

ルールが違うので全然違います。

野球選手がソフトボールの練習をしないじゃないですか。共通する部分はありますが全く違う部分もあります。

怪我をする前からも両立の難しさは感じていました。練習も意識も違うから上手く行かないんですよね。際の反応で壁を使ってテイクダウンしたりとか、テイクダウンされた瞬間にパッと起きるとか。

そういう反応がワンテンポ遅れるんですよ。それがMMAでは命取りになります。だからこれは両方やってMMAのトップで勝てるほど甘くはないと感じました。

難しさも感じているところで、疲労骨折したのには縁を感じたので、これは巌流島に専念したほうがいいのかなと。

MMAは大好きだけどそういう流れなんだろうなと。

ーーそれでも2018年は菊野選手のMMAを見たいファンも多いと思いますが、可能性はあるのでしょうか?

もし出るとしてもめちゃくちゃMMAの練習をしないとトップどころには勝てないですよ。中途半端に出ても意味ないですもんね。

これはテコンドーとは話は別なんですよ。全くの別物にトライすることと、やり込んできたMMAで試合をするというのは大きく意味が違う。

技術的にも僕がテコンドーの大会に挑戦するというのはしのぎを削るというよりはジャンケンのように違うもの同士でやったらどうなるの?という異種格闘技じゃないですか。

それだったら細かいことは大した問題じゃないですけど、MMAではMMAファイター同士で戦うことになるので、そこはちょっとした差が勝負になります。

その差で勝つにはMMAの練習をやりこまなければいけない。そしてその練習をやっていると巌流島が疎かになる。じゃあ、もうあれかなって。

ーーでは今はもう巌流島とテコンドーの練習がメインですね。

そうですね。巌流島とテコンドー。そのための沖縄拳法空手。強くなる練習、ヒーローになるための修行です。

ーー今や巌流島のエースですよね。巌流島では負け無しの戦いが続きますが、菊野選手が出場を続けて改めて感じる巌流島の魅力は?

強さを求めているので、実戦に近いのは楽しいんですよ。

例えばMMAで寝技で時間をかけているときに、この時間はいったい何なんだろうって思うことがあるんですよ。こんな事は実戦で起きないよなって。

こんな体勢だと噛みつかれるじゃんとか、急所を晒すってどうなのって思ってしまう。でも巌流島ではそういう状況が少ないので面白い。

あとは斬り合いなんですよね。「始め」って合図がかかった瞬間にバシャンって勝負がついたり、バシャーン、バシャーン、バシャーンって斬り合いのような戦いが続くのが巌流島なんですよ。ルール的に。

MMAの試合はバシャーン、ガチ、グー、ドン、グググ、バッ、ガシャって感じで展開が途切れなく続くんですよ。

巌流島はそうじゃなくて仕切り直しみたいな間があって、硬直が無く斬り合いが何度も続くから面白い。

ーーなぜそうなるのでしょうか?

異種格闘技戦だからなのと、実戦に近いから。要はひっついて長くいる攻防が実戦では起きないんですよ。

それと何でもありだったら闘いは長引かない。一つの攻防がとても重要になるんです。

ーー巌流島は道着を着用するというのも独特ですよね。

とても面白いですよ。日常で裸でいる人なんていないじゃないですか。

Tシャツでも着ていたら掴まれてコントロールされるわけですよ。なのでその使い方が凄く面白い。

結構やっかいですよ。体勢が崩されたり、固定されたりして、投げられたり殴られたり。色んな技術が使えなくなったりしますし、逆に色んな技術が使えるようになる。全く技術が変わってくるんですよ。

レスリングと柔術の技術が違うのと一緒ですね。

先日、巌流島手合わせ稽古会という、色々な武道・武術・格闘技をされている方達と一緒に巌流島ルールで軽く手合わせするという稽古会を開催しました。また練空武館の高久昌義館長が主催するかけ試し稽古会というのによく参加させて頂いています。

(2017年12月に行われた巌流島手合わせ会には全国からあらゆる流派の猛者が集うことになった)

これらの稽古会はバックボーンの違う多種多様な相手と連続して組手をするというものでとても大きな経験値を得ることが出来ます。

実戦では相手が何をしてくるかわからないという状況で瞬時に情報を得なければいけません。

この距離はヤバいとか、どこを狙ってるとか、武器を持ってないかとか。その情報を早く手に入れて安全に戦わなければいけない。

競技だったらやり直しがきくからいんですけど、もし命のやりとりだった場合相打ちでは駄目な訳じゃないですか。やられてもいいという気持ちでは駄目。

だから覚悟を決めていくっていうのは本当に最後の最後の手段なんです。実戦はいかに生き残るかなんですよ。その相手の情報を得て、やられるリスクを減らして戦うというのは物凄く重要なんです。

どうやってリスクを背負わずに戦えるかを考えながら戦うのは凄く面白いし、経験値は物凄く上がりますね。

ーー話は1月3日の巌流島の話に移りますが、今年は小見川選手との再戦が決まりました。小見川選手の印象は?

とてもパワフルで気持ちのいい人。本当に兄貴的な存在です。

ーー菊野選手と小見川選手は過去に練習を共にしていたそうですね。

そうですね。僕が吉田道場に行くこともありましたし、小見川さんがアライアンスに来ることもありました。

2年ぐらい前だと横浜のグランドスラムさんで一緒に練習したこともあります。

ーー小見川選手の競技者としての印象はどうですか?

(1月3日に菊野が拳を交える小見川道大)

小見川さんは凄く柔道に誇りを持っていて、MMAでも柔道を活かして戦っている選手です。

昔、小見川さんに言ってもらったことで印象に残っているのは、僕が空手をMMAに上手く活かすことが出来なかった時代にボクシングをやってる方から「空手を捨ててボクシングをもっとやったほうがいい」と言われたんですよ。

その時に小見川さんが「何言ってんだ!空手を捨てる必要なんかないだろう!」って言ってくれたことですね。

その時は凄く嬉しかったですし、小見川さんもそのくらい柔道を大切にしているんだなと感じました。

同じものを持っているというか、自分のバックボーンがあってそれをMMAや巌流島の舞台で活かしている。そういう意味で凄く共感する部分も強いですし、人として大好きですし尊敬しています。

ーー今回は再戦になりますが、前回の試合にはどのような感想を持っていますか?

試合には勝ちましたが勝負には負けたという気持ちがあります。

ーー勝負に負けた?

僕は先に巴投げで場外に出されているんですよ。あそこが階段だったり道路だったら僕が死んでたかもしれないです。実戦だったら僕が負けていたかもしれない。

先に僕が転落をとっていたら感じ方も違ったかもしれませんが、僕が先に転落させられているんですよ。転落の意味というのはそういうことなので。

僕は巌流島で8戦していて転落はあの試合が唯一です。

僕はそれくらい転落をしたくないんですよ。だって実戦なら死ぬってことだから。

ーーでは今回はリベンジを受けて立つという気持ちではないんですね。

そうですね。僕の中でも悔しい気持ちもあるし。

また今回の試合は僕がリベンジを受けるという形にはなりますが、僕は一回勝った相手と試合をするのが初めてなんですよ。そういう意味でも挑戦です。

僕が前回勝っているからと気が緩んだらやられると思います。小見川さんはトーナメントで1回戦と2回戦をパンチ1発でKOしています。あの一発を食らったら僕も倒れます。

ーー今回は巌流島のエース対決で、2018年の最初からクライマックスという形になっていますが、どんな試合をファンに見せたいですか?

正直に言うと面白い試合になるかというのは結果なので、作ろうと思って作れるものではないんですよ。

だけど絶対に攻めたいというか、ビビりたくないです。巌流島と言うのは勇気を見せる舞台だと思っているんです。

挑戦する舞台、怖いけど前に行く。だから攻めたいですね。絶対に守りに入りたくない。

僕は前の試合の時に転落で死んでいるかもしれないので、改めてになりますが今回は僕が挑戦の気持ちで試合に挑みます。

菊野克紀プロフィール

柔道や空手といった武道をバックボーンとし、23才の頃に高阪剛が主宰する『ALLIANCE-SQUARE』に入門し、総合格闘家として活動を始める。

総合格闘技では空手技である『三日月蹴り』を取り入れ、従来のセオリーにはない軌道となる三日月蹴りを武器にDEEPを舞台に勝ち星を重ね、2009年にはDEEPライト級王者に輝く。

その後、メジャー舞台であるDREAMにも参戦し、世界の強豪と互角の試合を繰り広げたことでも評価を高めた。2014年からはUFCにも参戦するなど、MMAファイターとして世界最高峰の舞台にも挑戦している。

2016年からは巌流島に継続参戦しており、現在では巌流島のエースとして団体の顔にもなりつつある。2018年1月3日にはかつて巌流島で勝利している小見川道大と再戦することになる。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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この記事へのコメント()

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匿名ユーザー
2018/01/01 22:46

武道家特有の理屈を超えたところがあるけど、菊野の強さを追求する姿勢がよく分かる良いインタビューです。

小見川vs菊野はぜひ見てみたいけど、巌流島はCS放送だけなのがなあ…。

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kuros
2018/01/01 23:26

巌流島に専念することにしたんですねえ。RIZINとは違う形で日本の格闘技を盛り上げてほしい。フジももうちょっと巌流島を推してほしいところ。ド深夜でいいから地上波で放送するとか。

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匿名ユーザー
2018/01/04 05:29

なんだこれは・・・すごい武道家が現れたもんだな。。。

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