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UFCヘビー級タイトルマッチ「フランシス・ガヌーvsスティーペ・ミオシッチ」の見所と対戦考察。ヘビー級に新たなスター誕生なるか。【寄稿記事】

2018/01/19 17:23

UFCの新たなスター候補として目下大注目のフランシス・ガヌー。驚異の身体能力で競技歴わずか5年でトップファイターに上り詰めたガヌーに対し、目下4連続1RKO勝利を収めている王者のミオシッチが迎え撃つ。ヘビー級の節目となりうる注目のタイトルマッチだ。

1月21日(日)に開催される『UFC 220』では、メインイベントにヘビー級タイトルマッチ「スティーペ・ミオシッチ vs フランシス・ガヌー」の一戦が行われる。

人材難と言われるヘビー級において、フランシス・ガヌーは新たなヘビー級のスター候補として目下大注目のヘビー級戦士だ。驚異の身体能力を武器に競技歴わずか5年にしてタイトルマッチにこぎつけたガヌーだが、王者のミオシッチもここ4試合連続で1RKO勝利とまさにキャリアのピークに達している。

そんなガヌーとミオシッチの一戦はUFCヘビー級の節目となりうるビッグカードだが、この対戦を控えるに辺り、新たな試みとして格闘技ブロガーの方に寄稿という形で記事を提供してもらうことにした。

ブログ『Truth reflect on the canvas』を運営しているgin-chang氏による「ガヌーvsミオシッチ」の見所および対戦考察を行ってもらった。

UFCの次世代スターであるガヌー

挑戦者フランシス・ガヌー(31=カメルーン)は、カメルーン生まれ、フランス在住のヘビー級ファイターだ。

『100% FIGHT』で行われたヘビー級トーナメントで優勝するなど実績を積み、5勝1敗の戦績でUFCデビューを果たす。するとそこから5試合連続のフィニッシュでランキングに名を連ねると、昨年12月にアリスター・オーフレイムと対戦した。

日本でも活躍していたアリスターを、1Rに左アッパーで失神KOするという離れ業によりUFCで6連勝を達成。その豪快なKOシーンは全世界のMMAファンに衝撃を与え、文句無しのタイトルショットを手に入れた。

(クレジット: Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

往年の黒人ヘビー級ボクサー達を彷彿とさせる、均整の取れた肉体から繰り出される破壊力抜群のパンチが最大の武器で、加えて最小限のスウェーからカウンターを当てる天性の当て勘は、ヘビー級のコナー・マクレガーといっても良い非凡な才能を持っている。

『UFC 220』のヘビー級タイトルマッチがいつになく注目されている最大の要因は、ひとえに挑戦者フランシス・ガヌーの存在にあるだろう。

モハメド・アリ、マイク・タイソン…。かつてボクシングの世界では、節目節目の時代で黒人のヘビー級ハードパンチャーが登場しては、競技の花形として人気を博し、同時に格闘技の枠を飛び越え語り継がれるものとなっている。

そして昨今では、ヘビー級の絶対王者として永きに渡って君臨していたウラジミール・クリチコを破った、イギリスのアンソニー・ジョシュアの活躍が記憶に新しい。

「神の階級」と呼ばれるヘビー級、その強靭な肉体と驚異の身体能力から生み出されるハードパンチは、他の階級には無い特別な重みを、対戦相手のみならず、観る者に深く訴えかける。

フランシス・ガヌーという選手は、歴代のヘビー級レジェンドボクサーの再来を予感させるポテンシャルを秘めた選手だ。ガヌーもまた、相手を一撃でノックアウトできるハードパンチャーである。

ガヌーが格闘技を始めたのは26才からのことであり、MMA歴はわずか5年という短いキャリアの中、経験で大きく勝る強豪ファイターたちを、その豪腕でいとも簡単に沈めている。荒削りながらも天性の才能を持ち合わせ、計り知れないポテンシャルを感じさせることから、ガヌーを次世代のUFCスターとして推す声は絶えない。

果たしてその豪腕は、王者ミオシッチさえも飲み込んでしまうのか。

技術に裏打ちされたストライカー、ミオシッチ

現UFCヘビー級王者スティーペ・ミオシッチ(35=アメリカ)は、カレッジレスリング、アマチュアボクシングを経た後に、2010年にプロ格闘家としてデビュー。2011年にUFC出場を果たすと、マーク・ハントやロイ・ネルソン、アンドレイ・アルロフスキーといった強豪選手を破り、2016年5月には、ファブリシオ・ヴェウドゥムの持つヘビー級王座に挑戦。

打ち気に走るファブリシオを相手に、冷静に右フックのカウンターで沈め、見事に新王者に輝いた。防衛戦では前王者ジュニオール・ドスサントス、元K−1&ストライクフォース王者アリスター・オーフレイムといった強豪をいずれも1RTKOで破り、2度のUFCヘビー級王座防衛を果たしている。

王者のミオシッチもガヌーと同じくハードパンチャーで、現在までに4試合連続で1RKO勝利を果たしているが、これにはMMAファイターとしての高い技術の裏打ちがある。

彼の強さの根底にあるのは、巧みに繰り出される左のリードジャブだ。

ミオシッチはジャブが巧みなMMAファイターで、単に有効打を稼ぐというだけでなく、攻防を組み立てる距離の把握、コンビネーションへの繋ぎ、フェイントと多彩な用途でジャブを活用する。インファイトのみならず、アウトボクシングから、蹴りやタックルを織り交ぜた多彩な戦術を使いこなす。

そしてNCAAディヴィジョン1での実績を誇るレスリング技術も兼ね備えており、グラウンドでの押さえ込みから、強烈なパウンドの一撃まで、寝ても経っても試合を支配する能力を持つ。

両者の試合を分けるポイントとは

豊富なスキルを持つ王者ミオシッチに対し、MMA歴はわずか5年ながらも、ここまで才能で上がってきた感の強いガヌーとでは、経験値の差は歴然である。

また、衝撃KOに終わったアリスター戦では、筆者はアリスターが動揺して本来の力を発揮できなかったことが勝因の一つであると考えている。

そして王者のミオシッチといえば、あのマーク・ハントの豪腕パンチすらスリッピングアウェーでディフェンスするという肝の据わった戦いを見せ、観客からの激しいブーイングが飛んだ敵地ブラジルの試合でも、冷静に自分の試合を遂行した。おそらくは怪物ガヌーを相手にしても、心理的に動じずに、本来の強さを試合の中で存分に発揮してくるだろう。

ミオシッチとしては、タイトル戦ならではの5Rの長期戦を見据えた堅実な試合運びとするのがベストと考える。

振りの大きなパンチでKOを狙おうとすれば、ガヌーのカウンターの餌食になるリスクが大きい。そこで得意のリードジャブで確実に先手を取り、相手のカウンターを誘ってからジャブで潰しつつ、同時にボディストレートやローを織り交ぜ、着実にダメージを与えていきたい。

ガヌーは腰が重く、ミオシッチとしては序盤からテイクダウンを取ることは容易ではないが、ボディやローを効かせ、ガヌーの体力を削った後にはそのチャンスが生まれやすくなる。ガヌーは短期KO決着の試合が多く、スタミナ面で長丁場の戦いに適応できるかは不安要素である。そのためミオシッチとしては、尻上がりに試合を支配する機会を伺いたいところだ。

ガヌーのグラウンドスキルは未知数な部分が多いが、UFC以前にはパウンド禁止のルールで戦っていただけに、まだまだ経験が浅いと見ても良いだろう。MMAにおいて、経験値の差はグラウンドの展開において大きく露呈しやすい。

中盤以降にミオシッチがテイクダウンに成功し、ガヌーをグラウンドに引きずりこみ、ミオシッチはパウンドかサブミッションで完全決着を狙いたいところだ。

しかし、仮にミオシッチがどれだけジャブを命中させたとしても、1発のカウンターパンチで試合をひっくり返してしまうのがフランシス・ガヌーの恐ろしさだ。

ガヌーのパンチは粗さが見られる反面、相手からすれば軌道や出所が読みにくいという強みもある。堅実な試合運びが求められるミオシッチだが、一回のミスが命取りになる可能性を孕んでいる。鉄のメンタルを誇るミオシッチだが、そこにわずかな綻びが生まれれば、ガヌーにもチャンスが訪れるだろう。

そのためにもガヌーが有効活用したい武器はローキックだ。

ガヌーはこれまでローキックを放つシーンはあまり見られなかったが、トレーニングコーチをして「ガヌーのローキックは今まで喰らった事が無いほど強烈だ」と話すほど、強烈なローキックを持っている。

そしてジャブが届く距離とは、すなわちローキックが届く距離でもある。

キックやMMAといった蹴りありの競技においては、ジャブを放ってもローキックのカウンターを貰うことで、逆に試合を支配されてしまうケースがしばしば見られる。(K-1 MAXの「魔裟斗 vs. アンディ・サワー」、UFCの「ジェレミー・スティーブンス vs. ギルバート・メレンデス」など)

リードジャブで試合を組み立てることの多いミオシッチだけに、ジャブや右ストレートの踏み込みに合わせて、ガヌーがローキックのカウンターを効かせる事ができれば、戦況はガヌー優位の展開へと傾く。

ガヌーがローキックで距離を支配し、ダメージを与えたところで、射程圏内にミオシッチをおびき出せれば、ガヌーのカウンターパンチでの一撃KOというシーンが見られるかもしれない。

恐れを知らぬ鋼の心を持つ王者・ミオシッチと、怖いもの知らずでヘビー級の最前線まで駆け上がってきた挑戦者・ガヌー。

一撃で勝負が決まるチャンスとリスクを孕んだ神の階級、ヘビー級のタイトルマッチだけに、技術のみならず心理面での両者の立ち回りも見所になりそうだ。

(※本記事はブログ「Truth reflect on the canvas」に掲載された記事を、著者の許諾を得て、クイール編集部にて監修した内容を掲載しています。)

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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gin-chang
格闘技ブロガー

2002年のボブ・サップフィーバーから格闘技に関心を持つ。格闘技バブル期は主にK-1を視聴し、地上波から打ち切りになってからは、UFCの競技レベルの虜となりUFCファンとなる。現在もUFCを中心に格闘技を観戦中。

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