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町田光インタビュー。引退宣言、電撃復帰を経て、2018年はキックボクシングの求道者へ。

2018/02/06 17:17

KNOCK OUTが2年目を迎える2018年の第1弾興行『KNOCK OUT FIRST IMPACT』が大田区総合体育館にて2月12日(月・祝)に開催される。

そして第1弾興行の第1試合には、"居合パンチャー"町田光(30)が登場する。大会ムードを左右する第1試合は勝利以上に白熱した展開が求められる試合順となるが、町田はこれで前回の両国大会に続いて2大会連続での抜擢となる。

町田といえば、トレードマークの着物にインターバル中の正座など、「和」をモチーフにした立ち振舞い、そして居合抜きのモーションから繰り出す「居合パンチ」などオリジナルの技を持つ異色のキックボクサーとして知られている。

(世にも珍しいボーリングで居合パンチのモーションを取る町田光。これをもって異色というわけではない。)

また2016年には「あと1年でキックボクシングで生活できなければ引退」を宣言し、昨年にはKNOCK OUTライト級トーナメント優勝を現役続行への唯一の条件に定め、敗れれば引退という背水の陣で臨んだことが反響を呼んだ。

トーナメントは1回戦こそMMAファイターのDJ.taikiから勝利するも、準決勝では後の優勝者である森井洋介の肘打ちによるカットで2RTKO負け。この敗戦により現役を退くことになったが、ファンの声に後押しされる形で2ヶ月後のKNOCK OUT両国大会で電撃復帰すると、レジェンドの大月晴明から右ハイキックでKO勝利を飾っている

ブランクを作らずに見事にカムバックを果たした一方で、負ければ引退として臨んだ昨年のトーナメントに敗れたことで、町田にあった大きなストーリーは一つ終了を迎えた。そして現在はライト級王者・森井のタイトルを狙う挑戦者争いにも組み込まれておらず、目に見える分かりやすいゴールは提示されていない。

一旦はメインストリーム、トップ争いからは外れたところにある町田はどこに目標を見出しているのかをテーマに今回はインタビューを行った。

欲を捨てて、キックボクシングの求道者へ

ーーなにやら今年のお正月は大変だったそうですね。

そうですね。実は元旦に練習をしていたらスパーリング中に呼吸が上手く出来なくなってしまったんです。

僕はもともと喘息を持っているので、久々に喘息の発作が来たなと思ったんですよ。それでしばらく休んでいたらどんどん呼吸が早くなってきて、これは今までにない症状でただの喘息じゃないぞと。

もう空気が吸えなくなってきてこれは死ぬかもと思いました。

それで練習は取りやめて帰宅したんですがそれでも良くならなくて。なので夜間病院に行って点滴など治療を受けることになったんですよ。

ーー病院には救急車で行かれたんですか?

家の車で行きました。でも救急車を呼んで行ったほうが良かったですね。救急外来が混んでいて2時間くらいロビーで待っていたんですが、その間はもう死にそうになっていました。

本当に調子が悪い時は救急車を呼ばなくてはいけないんだなって教訓になりました。

ーー原因は何だったんですか?

確定ではないんですが、その日に犬と触れ合ったことが原因という説が濃厚なんですよ…。

前から犬に触ると顔が赤くなったり、肌が荒れたりしていまして、これはもう犬アレルギーなんだろうなって。

ーー町田選手は以前から犬好きを公言していながら、戌年の1月1日に犬アレルギーで病院に行くことになるとは…

もうショックですね。実は高校生の時は犬を飼っていて毎晩のように抱っこをして一緒に寝ていたんですよ。

考えてみればその頃は喘息の発作がよく出ていたし肌も荒れていました。それも犬と住まなくなってから凄く改善されるという流れがありました。

その時は犬アレルギーだというのを思いつかなかったんですけど、その時からだったんだろうなって。

ーー「人間よりも犬が好き」と公言している町田選手としてはショックな出来事ですよね。

将来は柴犬を飼おうとずっと思っていたんですよ。もう夢破れたりですよ(笑)。

ーー正月の出来事から落ち込んでいる町田選手ですが、昨年はKNOCK OUTを主戦場に5試合を戦いました。振り返ってみてどの様な1年だったんですか?

本当に苦しかった1年ですね。1月に巌流島に出て勝ったんですけど、その一ヶ月後に初参戦したKNOCK OUTで負けて。もう自分はもちろんとして周りの人も失望させてしまいましたよね。

ーーあの頃は短いスパンで連戦を戦っていましたよね。

そうですね。10月、11月、1月と試合をしての2月で、しかも10月と11月はどちらもダウンを喫しているですよ。しかも11月は負けているのにその中で1月の巌流島に強行出場した。

もう身も心もボロボロの状態ではあったんですよ。

ーーその中で2月は下馬評で上回る中で山口侑馬選手にTKO負けでした。

もう潮時なのかなって正直感じました。

ーーそこから少しの休養が入りましたが、その間にKNOCK OUTのライト級トーナメントに出場するチャンスを得ました。

それまでは目指すべきところを見失っていたんですが、優勝したら選手としてこれ一本で食べていけるということが明確に示されていたので、これはチャンスだなと感じました。

僕は昨年中にキックボクシング一本で食べていけなかったら引退すると宣言していたので、じゃあどうすればいいのかという明確な目標になりました。

ーー1回戦は総合格闘家のDJ.taiki選手との接戦を制しました。

DJ選手は強かったですし勝った気がしなかったですね。

ーー4Rまでは差が付かず5Rに連発でヒットさせた居合いパンチが勝負を決めましたね。

その印象だけでしたね。よく言えば必殺技に救われたんですけど。

でもお客さんが見てつまらない試合をしてしまったし、自分自身も納得のいかない試合内容でしたね。

ーーですが居合いパンチが連続してヒットし、最後に見せ場は作りました。

やっぱ来るとわかっていても避けられないパンチなんだなと思いましたね。偉そうなことを言ってしまいましたけど(笑)、なんで当たるかはわからないですけど、そこは居合いパンチの特徴なのかなって。

ーーしかしDJ選手との1回戦に勝利するも、この試合でアゴを骨折してしまいました。

1R目にアゴが折れてしまってたんですよ。奥歯がズレてるのがわかりましたし、力も入らなかったのでこれは気持ちで戦うしかないという感じでした。

ーー試合中に自覚があったんですね。怪我の重さはどれ程だったんですか?

最初に病院で見てもらったときは「今すぐに入院しろ」と言われたんですよ。それで1ヶ月間は一切外出もできないだろうと言われて。

でもそれはキツすぎるので色んな人に相談して、そうしたら手術しなくても治るよという方が見つかって手術なしでいけました。

手術をすれば歯茎を縫う必要があって口が開けないので外出ができず、長いブランクを作るのは間違いなかったので回避できて助かりました。

ーーただ手術は回避したものの、6月に骨折して10月に試合というのは準備期間も少なくコンディションを整えるのも大変だったのではないでしょうか?

難しかったのかもしれないけど、みんな何かしら怪我や事情など問題を抱えていると思うのでそこは問題ないです。

ーーそんな中でも森井選手との試合は敗れはしたものの、序盤に押し込む場面もありました。

僕はやる前から森井洋介を怖がらせて下がらせることができるという自信があったんですよ。根拠はないですが、相手より強気になれたら下がらせることができると。

そこは自分が誰にも負けないところですし、お客さんにもその姿を見せたかったという思いがあります。

ーー試合はヒジでカットを奪われてのドクターストップでした。試合が止まったときの心境は?

1R目に切られたことはわかっていて、そこからガードを上げてレフェリーに気づかれないように戦っていたんですよ。

それで2R目は止められるだろうから自分で止血をしようって。

ーー自分で止血?

集中力を高めると止めれることが多いんですよ。それで段々止まってきたぞってところでストップされてしまったので自分的にはもどかしかったです。

ーーまだまだ試合はできたし、試合さえ続けば勝利する自信はあったと。

タラレバなんですけどありますね。

ーーある意味町田選手としてはまだ終わってない試合なんですね。昨年のトーナメントは「引退をかける」と明言しての参戦でしたが現役続行となりました。準決勝が不本意な形で終わってしまったというのも要因なのでしょうか?

試合が終わってから自分の中でやりたい気持ちがまだ残っていたんですよ。でも続けていいものかという思いもありました。自分であれだけ言ってたので批判が出るのはわかっていましたし。

でも批判がされるのが嫌で続けずに、何年後かに後悔する人生を歩むよりかは、批判されながらでもやりたい気持ちがあるなら続けたほうがいいなって。

ーーこれからも試合を続けていきたいという原動力はなんだったんでしょう?

まだ試合が見たいと言ってくるファンの皆さんが自分の思っていたよりも多かったというのはあります。

当初は自分がキックボクシングで生計を立てられなければ引退ということだったんですよ。それがKNOCK OUTに出場を続けることでその見通しも見えてきたという感じもして。

ーー現役を続行するうえで新たな目標にすることは決まっているんですか?

正直定まってはいないです。小野寺プロデューサーから「両国で大月晴明選手と試合をしないか?」という話が来たときは何を目指したらいいかわからなかったけど、大月さんとだけはやりたいと思っていました。

大月さんだからやりたいなって。憧れの存在でしたから。

僕がキックを始める前から存在を知っていた選手で、その頃は映像も見られなかったので、合気道とキックを融合させた大月選手のスタイルというのを頭の中で凄く想像していました。

その時は18戦してほぼKOだったじゃないですか。それまで魔裟斗選手に憧れていたんですが、大月さんはそれ以上の憧れでした。

実は過去にスパーリングを1度だけさせてもらったことがあるんですが本当に何もできなかったですし、その時はこんなに強いんだって感動しましたし、いつか超えるべき目標だとも感じていました。

ーーその大月選手に勝利した瞬間はどんな気分でした?

大月選手に勝利することはもちろん嬉しかったんですけど、その時は改めて試合って難しいなって感じました。

フィニッシュになったハイキックは僕の頭の中にはなかったんですよ。セコンドから「ハイキック」という声が聞こえて、とりあえず出してみるかってことで蹴ったら倒せて。

今まで僕がKOする概念って間違ってるのかな、僕が考えていたKOするという感覚は違うのかなって。

あと大月選手に勝利した実感は未だにないですね。試合に勝利したからといって大月選手を超える存在になれたわけではないので。

ーーこの試合で現役を続ける上での目標は見つかりましたか?

う〜ん。2月に試合のオファーが来たことはありがたいんですが、最初は全く乗れなかったですね。

僕は長身の相手に毎回苦戦するんですよ。なので髙橋選手とは噛み合わないと思いました。しかも向こうが勝ったらKNOCK OUTにレギュラー参戦という未来があるけど、僕が勝ったときの未来が見えなかった。

なので半分は戦いたくない試合だなと感じてました。でも自分も大月選手に試合を受けてもらっていますし、ここで試合を受けないのは違うなって。これは自分の試練だと思って試合に出ます。

あとはこの試合を通して自分のキックボクシングを追求していきたいという気持ちがあります。長身の相手が苦手というのも克服していきたいですし。

ーー今後の現役生活のテーマはキックボクシングの追求ということになるのでしょうか?

「追求」。それが一番大きいですね。理想はヒクソン・グレイシー、塚本徳臣、塩田剛三といった達人のような人になりたいんですよ。

僕がこれからキックボクシングでスター選手になれるかといったらイメージは湧かないです。なので皆からチヤホヤして貰うということはモチベーションにつながらないんです。

昔の自分はそれを凄く欲しがっていて、皆から「凄い」って言われたいという承認要求の塊だったんですよ。まあ、今もそうかもしれないですけど(笑)。

でも今はそこにモチベーションを持っていけなくて、じゃあ自分にとってのキックボクシングの喜びはなんなんだろうって考えました。そうしたらキックボクシングをより深く突き詰めて、達人のようになれたらそれが理想だなって。

ーー追求というのは憧れの存在と語る大月選手につながる部分かもしれないですね。

でもKNOCK OUTはスターを作ろうとしてくれているイベントじゃないですか。それに僕の理想は反するものではないのかなという葛藤もあります。

今の時点ですが、試合は理想のキックボクシングに向けての実験の場にしたいなという思いがあるんですよ。練習でしていることを証明する場として試合は続けていきたい。

ただプロとして試合をするにはお客さんを盛り上げていかなければならない。ある部分で相反するところもあると思うんですよ。

ーー達人を目指すとなるとそれは長い道のりになると思いますし、これからは長く試合に出場していくことになりそうですね。

していきたいですね。例えばそれがニーズと合わなければ試合は組まれないかもしれないですけど、まだまだ試合で色んなことを試してみたいです。

ーーそんな中で12月の試合後に町田選手はライト級王者の森井選手と対戦したいと発言していました。

森井選手に負けたままで終わりたくないという気持ちはあります。もちろんタイトルはあったほうが良いなは思いますし。

ただそこに全力疾走でいくかとなると自分の中では葛藤もあるのが正直な気持ちです。

ーーこの1年間でメンタル的な部分は相当変わりました?

そうですね。誰かの評価を気にしていたもキリがないなと思うようになりました。評価は幻想でしかなくて、コロっと変わるんだなって。

まだまだ承認欲求は消えないけど、そこをなるべく手放す方向で進めればなと。

ーー最後にファンにメッセージをお願いします。

新しい自分を見せれたらなと思います。今までの僕は面白い試合をしようとか、余計な気持ちがあって真っ直ぐ自分でガンガン突っ込んで切られるというパターンが多くありました。

そこを改善された新しい姿を見せたいと思います。それが面白い試合になるかは正直わからないです。でも楽しんで頂けたら嬉しいです。

負けたら色んなものを失う試合だということはわかっています。生き残ります。

ーー最後に補足として2018年の緒戦の相手である髙橋選手は狂犬キャラじゃないですか。戌年に犬アレルギーで入院して、その後の相手が狂犬というのは運命を感じませんか?

全く感じないです。

ーー!?

町田光プロフィール

1987年7月23日生まれ、30才。

幼少期は体が弱く、運動が苦手だったが、漫画「あしたのジョー」を読んだことで世界王者を目指すべくボクシングを始める。一旦は仕事でボクシングから離れるが、K-1で活躍する魔裟斗への憧れからキックボクサーとしての道を歩むようになる。

プロキャリアは黒星スタートだったが、叩き上げの選手として徐々に勝ち星を増やしてタイトルを複数獲得。とりわけREBELSやINNOVATIONでは団体の顔となるまでに成長した。

2017年には巌流島への参戦を経て、KNOCK OUTに初出場。初戦こそTKO負けとなったが、レギュラー選手として年間を通じて出場し、年間表彰では敢闘賞に選ばれる。

2018年はキックボクシングの求道者を目指すべく、第1弾大会の第1試合から登場する。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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この記事へのコメント()

2016 11 20 13.43.09
たわし
2018/02/07 08:53

町田光選手の魅力の伝わる良いインタビュー。最後のオチとなるやり取りも最高です。

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