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「引退後の格闘技キャリアの活かし方とは?」大野崇インタビュー 後編

2017/05/29 20:36

大野崇の格闘技キャリアを追った前編に続いて、後編ではパーソナルトレーナーとしてのセカンドキャリアや格闘技における安全性への取り組みなど、いくつかのトピックについて伺ってみました。

後編について

前編ではK-1 MAX創成期に活躍された大野崇さんに、K-1 MAX誕生秘話や、今だから明かせる秘話などたっぷりと紹介しました↓↓

後編では大野さんのセカンドキャリアを軸に、パーソナルトレーナーをされている理由や、某掲示板に出没していたという裏話も含めて伺ってみました。

話が飛び飛びになって読みづらいところがあるかもしれませんが、面白いポイントを一つでも見つけていただければ幸いです。

パーソナルトレーニングを始めるに当たって

(出典: 大野崇公式サイト)

ー 引退後はジム経営やキックのトレーナーではなく、フィットネスのパーソナルトレーナーをされていますが、どのような経緯だったのでしょうか?

ジムもやりたいなと少し思っていたんですけど、お金かかるのでやめようかなと。ランニングコストもかかるし、初期費用もかかるしで。

一時期はスポーツジムをやろうかと思って物件見に行ったこともあるんですけど、あの時にはちょうど東日本大震災が起きて、ちょっとやめておこうかなというのがありました。ハコを持つリスクは大きいなと思ったんです。

ー ランニングコストというのはどのくらいの想定だったんでしょうか

僕が当時考えていたのはこういったスポーツジムで月80万円とかですね。

ー 格闘技以外のフィットネス系なんですね

どっちかというとそっち寄りですね。一般の人向けに。

格闘技のジムはたくさんあるので、普通のスポーツジムの中の一区画として格闘技ができるスペースがあるみたいな感じです。

ー 格闘技ジムではなかった理由というのは?

現役中にトータルワークアウトというスポーツジムで「K-1EX」という格闘技のエクササイズをアルバイトでやらせてもらっていたんです。そのときの経験が大きかったです。

選手を辞めたあともそのままズルズルと燃え尽き症候群じゃないですけど、何しようかなということもなく惰性で続けていたんですが、パーソナルトレーニングが身近にあったし、そのスポーツジムのような形で一般の人がパーソナルトレーニングでやるのが良いんじゃないかなと思いました。

ー パーソナルはキックボクシング以外もやられてますか?

やります。ウエイトトレーニング、ムーブメントトレーニングやストレッチをやったりとか。

ー こういった場所を借りてという形でしょうか?

ファイトフィット渋谷とか、出張とか色んな場所でやりますが、メインはここ六本木OGRTokyoです。

ー パーソナルトレーニングはどういった方を対象にしているのでしょうか?

基本的には身体を変えたい、格闘技やトレーニングを楽しみたいという一般の方ですね。

ー どんな方が多いですか?料金はおいくらですか?

今は1回1万円でやっていて、それでも六本木、港区とかだと2万円とかが相場らしくて安い方みたいです。

1万円というとジムの会費くらいですから、週に1回トレーニングとかになると可処分所得が高い富裕層の方が多いですね。まあそこもあるんですけどね。富裕層を相手にしようと。

個人でやっているので薄利多売はできないし、時間も限られている。スモールビジネスで、富裕層を狙ったほうがいいというところにフォーカスして、港区という比較的富裕層が集まるところを拠点にしています。

ー 久しぶりに六本木来て、同じ日本かなっていうくらいの町並みでビックリしました(笑)

なんか違いますよね(笑)

ー 皆さん経営者の方が多いのでしょうか?

経営者とか自分で何かやられている方が多いです。

ー 格闘家ならではなのか、一般的なフィットネストレーニングなのか、どちらでやられてますか?

それは両方ですけど、ベースはやっぱり格闘技ですね。お客様もググれば分かりますし、僕のホームページにも実際に書いているので、そこでやってみたいと思ってもらえるかなと。

あとちょっと得してるのが、格闘家って怖そうと言うイメージが強いんですけど、「あれ意外と優しそうですね」というのがあります。「格闘技の選手だから怖いのかと思ったんですけど」って。ちょっとそこは得してるかなと。

格闘技の安全性について

ー そういえば格闘技の現役生活で、厳しい試合が続きましたがダメージはなかったのでしょうか?

そもそも引退しようと思った一因がダメージで、ちょっと頭にきてるなというものがあったんです。ろれつが少し回らなくなったりとか。ダウンとかKOって交通事故みたいなものですからね。

少し前にFacebookでシェアしたものとして、SCAT3という国際的なスポーツ、サッカー・ラグビーとかで用いられている基準があるんですけど、「脳震盪になった時にこうしましょう」といった取り決めがあるんです。

そこに【脳震盪になったら即練習中止】と書いてあって、復帰までには徐々にチェックして…という段階を踏んでいくんです。

格闘技だったら脳震盪になったら(ダウンしたら)トドメ刺しに行くじゃないですか。そう考えるとスゴイ競技だなと。

ー MLBの青木宣親選手が2年前に頭部へのデッドボールで何ヶ月も休養していましたね

格闘技だったら1ヶ月後にまた試合とかするじゃないですか。まあダメージは溜まりますよね。それもあって引退しようかと思ったんです。

ー 時間を置くと回復するものなのでしょうか?

完全には回復しないみたいです。脳細胞って一回死ぬと元に戻らないので。ただし他で補ったりで軽減することはできるみたいです。

 ー 競技人口が増えて欲しいという思いがありつつ、選手としては脳震盪だからというのは言っていられないところがあります。どうすればもっと安全対策に取り組める選手を増やせるでしょうか?

それは団体、運営側の責任ですよね。僕が知らないだけかもしれないですけど、そこをまともにやっている団体は皆無だと思います。ジム側もしっかり管理していく責任はあると思います。

今はインターネットで情報はしっかりキャッチできますし。僕の空手の先輩に「正道会館にこういう(SCAT3)のを導入したらどうでしょうか」と言ったら、先輩が館長に伝えてそれを取り入れてくれたこともありました。

まずは空手のジュニアの大会で、ジュニアは安全性を最優先しないといけないからそういうのを取り入れようと。組手の時にハイキックでダウンしたら、さっき言ったようなチェックするようにしてやっていこうとか、館長はその辺りの安全対策もしっかりとやられています。

こうして取り入れられるものってたくさんあると思いますし、運営もドクターや専門家を呼んで定期的な勉強会とかもっとやっても良いのではないでしょうか。

ー そういった取り組みは重要ですね。ただ改めて格闘技は誰もがやれる競技ではないかもしれません

まあそれはありますね。異常な競技ですよ。

何ヶ月も相手を殴る蹴るするためだけに一生懸命練習して、人前に出て殴り合えっていうのは。原始的なスポーツですよね。

ー だからこそ面白さがあるのかもしれませんね

そうなんですよね。人間はやっぱり普通のものは面白くないんですよ。少しくらい狂気を持ったものの方が面白かったりするので。

ー やはり格闘技が広まってほしいという思いは今もあるのでしょうか?

そうですね。総合格闘技はUFCがあって世界的に広まってきているじゃないですか。キックはそういうものがないので、特に日本でもっと広まってほしいです。K-1という形でもキックボクシングでもいいので広まってほしいですよね、昔くらいに。

でも、今のK-1には凄く期待していますね。昔できなかった加盟ジムだったりジュニア選手の育成など組織作りが進んでいますから。

昔のK-1がやらなかった、あるいはやろうとしたけど間に合わなかったことをやっているので新生K-1には期待してますし、応援しています。もっと、どんどん攻めていってほしいですね。

ー 何かイメージとしてあるのでしょうか?

僕はもっと他のスポーツを真似すればいいと思ってます。

パッと思いつきですけど年間シートとか、早割で何%オフとか、家族割、カップル割とかのダイナミックプライシングとか。野球とかサッカーとかだと他のスポーツの良いところをどんどん持ってくればいいんじゃないのかなと思いますね。

逆に他のスポーツが格闘技のいいところを取り入れているのも見ますしね。陸上競技のスタートの前に煽りVみたいな演出したりとか。

ジャンルに拘らず、良いところはどんどん取り入れていってほしいと思います。

2ちゃんねるに現れていた?

(出典: http://tamae.2ch.net/k1/)

ー 大野さんが「2ちゃんねる」に現れていたという書き込みを(インタビュー)前日に見つけたのですが、どんなことを書かれたのでしょうか?

全然違うことが書いてあったので、それは違うよと指摘したんですよ。指摘した後は「それでは皆さんさようなら」という形ですね。

2ちゃんねるは実は結構見てたんですよ。2ちゃんねらーですから僕は。まとめサイトとか今でも見ますよ。

ー 当時のK-1ファイターでは唯一かもしれませんね!

今はまあエゴサーチとかで皆見てるじゃないですか。当時はスマホもないしパソコンっていう文化が浸透してなかったので、あんまり見てなかったと思います。

主に他の選手のスレッドを見てましたけどね。

ー 大野選手のスレッドは良心的なものが多かったですけど、ボロクソに書かれているものもありました

僕がよく見ていたのは武蔵さんのなんですけど、これ本人見ていたら大丈夫かなというくらいの書き込みでしたね(笑)

ー あんなに偉業を達成したのに…

それこそ「今こそ武蔵だろ」っていうスレを立ててほしいですね。

ー 「武蔵、京太郎再評価」みたいな!

そういうのをやってほしいですね(笑)
京太郎はアーツにパンチでKO勝ちしてますから。

ー バンナとも真っ向打ち合ってました

京太郎も次世代のスターになるかっていうところでK-1が消滅してしまったのは残念ですね。

格闘技は財産?

ー 格闘家のキャリアは今財産として残っているのか、それとも思い出として捉えているのか、どちらでしょうか?

両方です。楽しかったという思い出でもあるし、財産にもなってます。

実際に格闘技をやっていたから、ジムで仕事することも、色んな人と繋がることもできました。ほぼ全員が格闘技を通じて繋がった人なので、それは凄い財産です。

日本の場合、格闘技をやっていたというとリスペクト、尊敬の目で見てくれるというのもあります。それも凄く財産になりますね。

実際、多くのクライアントさんは僕のことを先生と呼んでくれますし。

ー 格闘家と言うと格闘技しかやっていない、という人もいますが、別の世界に行ってみたいというのはあったのでしょうか?

僕の場合は…流されてと言うか(笑)
なんとなくというか、僕結構流されるんですよ。その場のノリで(笑)

そもそも格闘技を始めたキッカケが友だちに勧められてって言う感じですし。

昔はこれ(格闘技)しかやっちゃいけないと思うこともあったんですけど、今は逆に色んなことをやったほうがいいんじゃないかと思ってます。その時々に楽しいことをやったほうがいいんじゃないのかと。

ー 「楽しいこと」がモチベーションなのでしょうか

嫌なことはやらない、という。

楽しいことと楽なことは違って、楽しいことだけどめちゃクチャ辛いことってあるじゃないですか。ただそこは別に辛いと思わないんです。

ー 好きなことをやっている過程が辛くても構わないということですね

格闘技の練習と同じだと思います。
例えば格闘技の練習をしていて、"ああきついやめたい"という人も、中にはいるかもしれないですけど、大概はそんなこと思っていないじゃないですか。

夢中で強くなるために一生懸命やってる。他の人にこれやるといいよ、なんて言われるとすぐにやったり。それと同じでその時に楽しいと思うことをやって、そのためにこれをやらないといけないことは頑張るというスタンスです。

そういえば「格闘家フィルター」みたいなのがあるらしくて、僕は格闘家にしてはマトモだっていう評価をされることもあります(笑)

格闘家というと、時間にルーズとか、飲んで暴れるとか、ろくでもないイメージがあるみたいです(笑)本当はごく一部なんですけどね。

僕は意外とそういうのがないから格闘家というフィルターを通して、まともに見えるみたいです。一般社会から見たらごく普通なんですけど、マイナスから見てるからプラス評価という(笑)。

ー ギャップを作るというのは大事かもしれませんね

パーソナルトレーニングをしている時も「格闘家なのに意外と先生優しいですね」とか。逆に長いクライアントさんになると元格闘家ってこと忘れてて「先生意外と動けるんですね」なんて言われますよ。

たまにお手本で"こんな感じでやります"と動いてみせると、「えっ先生そんな動けるんですか!」って。「一応プロ選手だったんで」って言うと、そうですよねって(笑)

だからやっぱり本当財産ですよ。
財産にするかどうかってその人の後の行動じゃないですか

例えば映画とかによくあるような飲んだくれて、ギャンブル中毒みたいな感じだとしたら、それは財産にはなってないですよね。

格闘技なんてやらなかったらもっとマトモだったのになって思うかもしれない。今は普通の社会人として生活できてるから格闘技は財産だなって思えるかもしれないですね。

ー 格闘技の経験は直接実務につながることはあるのでしょうか?

トレーナーとして良かったのは、ケビンさんのところや他のジムでもフィジカルトレーニングや自重トレーニングなど色んな経験をしているから、それが分かるというのがありますね。

このトレーニングをやっている時はこういう心境になるかとか、こういう状態なんだとか。やっていないと分からないことってあるので、これができないのはここが弱いからできないんだなとか。これができない時にこういう言い方をされるとイラッとするなとか。

自分が色んなトレーナーに習ってきていたので、ティーチングとしてこういう言い方をすれば良いとか、この言い方はわかりづらいなとか、トレーナーの仕事として凄く役に立っていますね。

あとはブランディングですね。

僕は今ファイトライフ協会というところの講師をやらせていただいていて、名古屋のALIVEという日沖くんのジムの鈴木会長が「格闘家のパーソナルトレーナーを増やして、食える格闘家を増やして、将来的に日本をもっと元気にしていく」という取り組みをされているんです。

ファイトライフ協会のブランディングの一つとしてあるのは「格闘家が教える」ということ。

日本は格闘家はリスペクトの目で見てくれるので、格闘家に教えられるということで、自分も強くカッコよくなれると思ってもらえる。
「かっこよくて動ける体になりたい」という人にはこれ以上ないブランディングになるので、格闘家をやっていたというのは重要な要素になるんです。

一般常識がある格闘家の人はチャンスだと思います。

ー なるほど、貴重なお話ありがとうございました。もっと聞きたいことはあるのですが、時間の都合上ここまでとなります。

最後に

インタビュー時間が限られている割に、あれも聞きたい、これも聞きたいということで話題が飛び飛びになってしまい申し訳ございません。

録音を止めてしまった後の雑談で、アンディ・フグやマイケル・マクドナルド、ジャビット・バイラミらとスパーリングしていた時の話など、実は他にも面白い話はあったのですが、録音を忘れてしまった自分のうかつさに後悔しております(-_-;)

それでもこのようなポッと出のサイトのインタビューに快く応じていただき、貴重なお話をしてくださった大野さんに改めて感謝申し上げます。

今回のインタビュー記事はこちらをもって終了となりますが、次回何らかの機会で登場していただくことがある…かもしれません。詳細が決まり次第、SNS等で報告させていただきます。

※今回の取材はOGRtokyoさんで行わせて頂きました。ご協力いただきありがとうございました

前編はこちら↓↓

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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