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メイウェザー戦で明らかになったマクレガーの実力とは?メイウェザーvsマクレガーの試合を技術・戦略面から分析。

2017/08/30 21:30

世紀の一戦「メイウェザーvsマクレガー」を技術面から分析。この試合で露呈したマクレガーの長所と短所、そしてメイウェザーはいかにマクレガーを攻略したのかを考察しています。

世紀の一戦「メイウェザーvsマクレガー」を分析

8月27日に行われたメイウェザーvsマクレガーの一戦についての報道も徐々に落ち着き、残るトピックとしてはPPV販売数がどれほどだったのか、両者がどれほどの額を稼いだのかということに尽きますが、このタイミングで試合の分析を行ってみます。

この試合に関する各媒体の報道を見ると、MMA系のファンやメディアではマクレガーの善戦を称える声が大きいものの、ボクシング系ではマクレガーが予想以上の実力を見せたものの、試合自体は平凡なものだったという評価が概ね見られています。

今回はそのような先入観を一度空にしてから、技術や戦術面から両者の試合を分析していきます。

序盤はマクレガーの体格を活かした独特の距離感をメイウェザーが測る

実際の採点ではマクレガーにポイントがついたのは1Rのみでしたが、多くのファンは3Rまでマクレガーがポイントを取っていたと見ていたように、試合開始からしばらくはマクレガーが距離を掌握して積極的に手数を出していきます。

両者の体格としては、メイウェザーが身長172cm・リーチ183cmに対してマクレガーが身長175cm・リーチ188cmとなっていますが、実際に並ぶとそれ以上の体格差を感じます。ほぼナチュラルウェイトで臨むメイウェザーに対して、マクレガーは1日で16ポンドを戻しており、当日の体重差は9kgほどあったとされています。

ウェルター級とスーパーミドル級ほどの体格差があるのに加えて、マクレガーは大きく半身に構えて、ゆったりと大きく構えて懐を深くすることで、メイウェザーとしては体格以上の距離感を感じていたでしょう。

マクレガーのパンチは脇を開いた状態から腰を入れずに、体と連動させて放つので、左ストレートとフックの軌道の違いが少なく、ボクシングのセオリーにはないパンチとなっています。そのためメイウェザーは序盤に時間を使ってパンチの軌道を見極めつつ、距離感を測ることに専念。この試合は特例としてスーパーウェルター級ながら8オンスに変更されていますが、手打ち気味にキレで放つマクレガーにとって10オンスから8オンスとなったことは有利に働いています。

メイウェザーは40歳という年齢に加えて、約2年のブランクがあることで、試合勘が戻らない時間は危険とされてきましたが、入場やフェイスオフの段階からリラックスして臨んでいたように、ブランクの影響は感じさせません。むしろ開始前から集中力をフルに高めていたマクレガーの方がスタミナの消耗という点で弊害が出ていたように感じられます。

マクレガーが体格とスピードで1Rを制す

マクレガーは一昔前のMMAファイターがグローブを付けた時のような力任せのパンチではなく、脇が開いて出所が見えづらい軌道から回転力のあるパンチを放ちます。

加えて反応速度や瞬間的なスピードも早く、ゆったりと構えた状態から瞬時にトップスピードに切り替わるメイウェザー特有のスピードにも対応しており、並みの選手ならアゴを跳ね上げられるであろう右ストレートにも対応。さらに懐に入ってくるメイウェザーに対しては左アッパーのカウンターを放つことがおそらくマクレガーの作戦であり、的中こそしなかったものの、序盤は十分脅威となるパンチとして機能していました。

後から振り返れば唯一取ったラウンドだったものの、1Rはマクレガーの積極性により10-9で優位を取り、世界中のファンに奇跡を予感させたラウンドとなっています。

メイウェザーのプレッシャーがマクレガーの体力を消耗させる

1Rを取られたものの、百戦錬磨のメイウェザーに戸惑わせることには至らず、2R開始早々にはおなじみのコーナーに篭って相手の攻撃を誘い込むような仕草も見せます。

待ちのスタイルになることも多いメイウェザーですが、体格差とゆったりと構えるマクレガーに対しては懐に入ることで打開を試みます。マクレガーは一発一発をハードヒットすることはなく、序盤はまだ反応も敏感なため、メイウェザーは動作の小さなパーリングでパンチを捌きながら、懐に入る機会を伺い、やがてボディーストレートが何度かヒットしていきます。

ガードをゆったりと構えるマクレガーに対しては、顔面へのパンチは手で弾かれやすく、一方で足が止まりがちなマクレガーに対しては、右のボディストレートへの反応がやや鈍いこともあってこれが有効になります。

ボディストレートは効かせるというよりも、相手の体に触れることで懐に入る距離感を掴む前動作として機能しており、メイウェザーはマクレガーのパンチを受けながらもジリジリと圧力を強めていきます。

1Rと比べるとやや潮目が変わっており、これによりジャッジ2名はメイウェザーを支持。ただし、まだ体力に余裕のあるマクレガーは手数が良く出たことで、多くのファンの見解としては3Rまではマクレガーが取っていたと見ていたようです。

MMAでは5分5R、25分間戦ったことのあるマクレガーですが、ボクシングの経験不足からか試合中に一呼吸置いて休むことはなく、またややオーバーペース気味だったこともあって、4Rからは目に見えて失速していきます。メイウェザーが守勢に回っているように見えて、常にプレッシャーを与えて休む暇を与えなかったことや、インターバル中に笑顔を見せることもあるメイウェザーとは対照的に、マクレガーは試合開始から集中力を最大限に高めていたことも影響しているかもしれません。

マクレガーのホールディングや鉄槌には目を瞑られる

マクレガーがMMAファイターということもあり、半ば無意識に鉄槌のようなパンチや、腕を抱え込むホールディングをしてしまいますが、この試合ではおそらく意図的に見逃されています。

レフェリーはボクシング殿堂入りを果たしているロバート・バードという名レフェリーで、マクレガーの習性を理解した上でスムーズに試合を進行させるために多少の反則には目をつぶられています。

ルール上はグレーというよりも、反則行為が時折見られたマクレガーですが、名レフェリーの粋な計らいによってさほどストレスを感じずに試合をこなせたのではないでしょうか。

懐に入られるとマクレガーの粗さが目立つ

4Rに入ってガクッと運動量の落ちたマクレガーは、反応が鈍く足も止まりだしたことでメイウェザーの圧力に対処できず、後退して距離を取ることを余儀なくされます。MMAのように組めばメイウェザーを子供のように扱えるはずのマクレガーですが、ボクシングでの組みとなるとメイウェザーの老獪さと腰の重さが目立ち、むしろメイウェザーの方が力強くさえ感じられます。

さらにマクレガーは脇を開いてパンチを打つため、ショートのパンチをコンパクトに打つスキルが不足しており、懐に次々と入ってくるメイウェザーに対しては手打ちのパンチか後退して距離を取って打ち返すかしか取りうる手段がありません。

世界最高レベルのディフェンス技術を持つメイウェザーと比べるとコントラストがハッキリするところがありますが、マクレガーはスリッピングやスウェーのバランスも悪く、ガードもゆったりと構えるので圧力負けをした時の対処にハッキリとした課題があります。距離を制して戦う選手であるため、こうして距離感を強引に潰されてしまうと、経験不足が鮮明に現れてしまいます。

マクレガーのパンチはもはや脅威ではなく、メイウェザーはダッキングでパンチを交わしながら容易に懐に入ることに成功。唯一マクレガーのジャブが有効で鼻先を捉えますが、タフで怯まないメイウェザーを止めるには至らず、メイウェザーのペースへとズルズル引き込まれていきます。

メイウェザーのアタックから衰えが顕著に現れる

序盤は守勢に回っていたことで表面化しなかったものの、アタックの場面になるとメイウェザーの衰えが顕著に現れています。

40才を迎え、2年のブランクがあるのですから、ある意味では当たり前のことですが、とりわけダッキングやボディストレートを打った時のバランスが悪く、かつてのような抜群のバランス感覚は失われています。またトップスピードやクイックネスもやはり衰えており、これによりマクレガーを本格的に捉えるまでに時間がかかったことは否めません。

とはいえメイウェザーが全く錆びついていたかといえばそうではなく、40歳という年齢を考えれば十分なパフォーマンスを保っています。

大きな展開はなく、メイウェザーが10Rにストップを呼び込む

もはやマジックが切れ、体力を消耗したマクレガーに打開する術はなく、ラウンドが進む度にメイウェザーのパンチが面白いように顔面を捉え、マクレガーの失速がより色濃く映ります。

その後は大きな展開の動きはなく、パンチを受け続けたマクレガーは8R・9Rとダメージを見せ始め、10Rには右ストレートで膝が落ちてバランスを崩す場面もあり、メイウェザーが追撃のパンチを放ったところでレフェリーが試合をストップ。

これにより10R1分5秒でメイウェザーがTKO勝利を収め、マクレガーの無謀な挑戦は幕を閉じています。

マクレガーは一芸なら世界レベル、メイウェザーは生涯無敗記録を更新

総じて見た場合、決してマクレガーのレベルが低かったということはなく、ボクシングメディアでもマクレガーのレベルが想像以上に高かったと評されることも多く見られます。

マクレガーのストロングポイントとしては、リカバリーを含めた体のサイズに加えて、瞬間的なスピード、そして出所の見えづらい左のパンチにあります。これらが機能している限りは、メイウェザーを相手でも互角に戦えることがこの一戦で証明されました。

その反面、ボクシング経験の少なさとメイウェザーの老獪さにより、接近戦での対応を始めとする様々な欠点が浮き彫りとなっての敗戦となりました。

一方のメイウェザーは衰えがあったのは確かであるものの、依然としてハイレベルなスキルは保たれており、その評価を失わずしてキャリア50戦で完全引退を迎えます。メガマッチの方に関心が行っているせいかあまり言及されることがないものの、50戦全勝はロッキー・マルシアノを抜いての生涯無敗記録を更新して、メイウェザーが単独1位となっています。

この試合のPPV売上は速報値で650万件と、過去最高のメイウェザーvsパッキャオの460万件を塗り替えてのレコード達成が期待されています。まさしく史上最高のメガマッチとなったこの一戦は後世に語り継がれる試合となるでしょう。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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