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井上尚弥と対戦のアントニオ・ニエベスについて紹介。戦う銀行マンにして、姉に訪れた悲劇を乗り越え初の世界タイトルを狙う。

2017/09/06 16:35

日本時間9月10日(日)にいよいよ井上尚弥がアメリカデビュー戦を迎えます。キャリアの節目となるアメリカ初上陸の一戦ですが、その対戦相手であるアントニオ・ニエベスについて紹介します。

井上尚弥のアメリカ初上陸で対戦するアントニオ・ニエベス

"日本ボクシング界最高傑作"とも称される井上尚弥が日本時間9月10日にいよいよアメリカデビュー戦を迎えます。

井上はアマチュア7冠という実績に、プロ転向後は当時日本最速の6戦目での世界王座戴冠。そして8戦目には飛び級しての二階級制覇を達成するなど最短距離でステップアップしてきました。

そしていよいよ満を持してアメリカに進出し、ローマン・ゴンサレスやシーサケットらスーパーフライ級トップ選手が集う「SUPERFLY」のセミファイナルに登場し、アメリカのアントニオ・ニエベスと対戦します。

(※手前の人物が今回紹介するアントニオ・ニエベス)

SUPERFLYではメインイベントの「ロマゴンvsシーサケット」のリベンジマッチに、その試合の勝者と対戦する「クアドラスvsエストラーダ」が行われ、アメリカの軽量級ファンにもその名を知られる井上がセミファイナルが登場することもあって高い注目を集めていますが、井上と対戦するアントニオ・ニエベスのみ国際的な実績を得ていない選手となっています。

6選手の中では格落ちするようにも見えるこのニエベスとはどんな選手なのか、ファイトスタイルと共にバックグラウンドも含めて紹介していきます。

戦う銀行員という顔を持つインテリファイター

この凛々しい顔立ちをしているのが井上と対戦するアントニオ・ニエベス。17勝1敗2分というキャリアを持つプエルトリコ系アメリカ人ボクサーです。

アマチュアボクシング出身の選手であり、五輪出場取った目立った成績は上げていないものの、北米の大会で上位に入賞する常連選手として活躍。2011年にプロ転向を狙うアマチュア選手の登竜門とも言われる「ゴールデン・グローブ」で準優勝し、同年にプロボクシングに転向しています。

これまでバンタム級を主戦場として戦ってきた選手で、井上のスーパーフライ級からは1階級上に当たる選手ですが、身長は163cmとやや小柄な選手です。

一方でリーチは174cmもあり、そのリーチを活かしたアウトボクシングを得意とします。構えはオーソドックスで、ロングレンジからジャブを丁寧に突いてから、右ストレートにつなげるというスタイルです。

選手としては全般的にそこそこ高い能力が備わっているものの、全体的にも可もなく不可もなくというタイプで突出したものがないことが特徴です。強いて言えばスタミナと打たれ強さに定評があり、チャンスがあればすかさず前に出る勝負勘を持っています。

WBOの北米タイトルであるNABOバンタム級王者となり世界ランキング入りを果たしていますが、実は今年3月に行われた試合で敗れ王座から陥落しています。

今回は再起戦となるシュチュエーションで井上の持つ世界タイトルに挑戦することになります。

現役銀行員としての一面も

選手としては取り立てて国際的な実績を持つわけではないニエベスですが、ユニークなのは銀行員として務めながらボクサーとして活動しているところです。

ニエベスの地元オハイオ州にあるPNCバンクという銀行に正社員で働いており、週5回の勤務をフルタイムでこなすインテリファイターとしての顔も持っています。

「プライベート・バンカー」という役職を持ち、実際の業務としては顧客の財産を有効な投資に向けさせるアドバイスを行っているそうです。

ところでニエベスは地元オハイオ州クリーブランドで、PNCバンクという銀行にフルタイムで勤務している。インタビュー前に調べたところ「プライベート・バンカー」と出ていた。これは窓口の職員ではなく、口座やローンの開設、融資を扱う行員を意味する。試合後、目にアザ、顔面に傷が残ったまま接客するケースもあるという。

――銀行ではどんな仕事を担当されているのですか?

N「銀行ではいろいろな職務をこなしている。いわゆるプライベート・バンカーとはお客さんの財産を可能な限り有効な投資に向けさせるアドバイスとヘルプをする仕事です」

かつてK-1ではレミー・ボンヤスキーが「元銀行員のインテリファイター」として活躍しましたが、ニエベスは現役銀行員としてボクシングの世界タイトル挑戦までこぎつけています。

「ギャラリー・フェイク」で知られる細野不二彦の漫画「太郎」では、信用金庫で働きながら世界王者を狙うボクサーの話が描かれましたが、ニエベスはまさに「実写版・太郎」と言っても良いのかもしれません。

姉を亡くした悲劇を乗り越えての世界挑戦

そんなニエベスですが、昨年は実の姉を殺人事件で失うという悲劇が訪れており、ニエベスの地元であるオハイオ州クリーブランドの地域ニュースで、この事件が詳しく報じられています。

昨年10月に報じられた事件で、ニエベスより9才年上の姉であるアーリン・リベラ・シントロンが以前付き合っていた彼氏から頭を銃で撃たれて命を絶たれています。また殺害した人物も自ら頭を撃って自殺したとのこと。

10年間に渡って付き合っており、彼のために献身的に尽くしたとのことですが、アルコールや薬物に溺れるなど問題のある人物ということで周囲の目は 冷たいものがあったそうです。

また事件の前にはナイフで脅されることもあり、姉はその相手から離れることを決意した矢先の出来事でした。

この事件はファストフード店のバーガーキングで起きていますが、また殺害された姉も7年以上バーガーキングで務めており、上司いわく「献身的に働く人物」だったとコメント。また姉には20才、15才、14才になる3人の子供がおり、母親の死という困難に立ち向かっていると報道されています。

そして、ニエベスはこの事件について次のようにコメントしています。

彼女は心優しい人物で、家族にとって本当に良い母親だった。子どもたちに対して無心の愛を注いでいた。

この事件が起きた時にどうにかしなければならないと思わされた。
これに立ち向かうためには、自分たちにできる最善を尽くさなければならない。

この事件から2ヶ月弱の11月26日にニエベスは試合を行いTKO勝利。そして1年後の2017年9月にいよいよ井上の持つWBO世界バンタム級のタイトルに挑戦することになります。

ニエベスは番狂わせなるか

スーパーフライ級のトップ選手が集結して行われる興行だけに、ニエベスはタイトル歴がなく、国際的な実績もないことから、他の出場選手と比較すると格落ちすることは否めません。

抜群のスピードと軽量級離れしたパンチ力を持つ井上とはやはり地力の差があり、井上がアメリカでも普段の実力を発揮すれば圧勝するとの見方が大半を占めています。

ニエベスは階級を一つ落としての挑戦となりますが、フィジカルが強いタイプの選手ではないことに加え、スーパーフライ級としては体格の大きな井上が相手ではアドバンテージとはならないかもしれません。

果たして井上が世界にその存在をアピールするための格好の標的となるのか、それとも苦境を乗り越えて世界初挑戦の権利を得たニエベスが意地を見せるのか。この記事を通じてニエベスに感情移入して見てもらえるキッカケになれば幸いです。

クイール編集部 ◯文 text by Queel
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