2017年10月18日作成

ボクシングはなぜ稼げないのか?"ボクシング界の異端者"土屋修平が語るその真意とは。【土屋修平ロングインタビュー前編】

ボクシング界の現状を巡りSNSで度々議論を巻き起こしてきた、ボクシング第60代日本ライト級王者の土屋修平。ボクシングを稼げる競技にするために必要なことをテーマに、1万8000字に及ぶロングインタビューからその真意を探ってみた。

かつてプロボクシングの舞台に颯爽と現れ、全日本新人王のタイトルを獲得。プロデビュー以来12戦連続KO勝利を収め、金髪の出で立ちと試合での鮮烈なKO劇、そして勝利後にはバック宙で締めくくるこの男こそ、第60代日本ライト級王者の土屋修平だ。

格闘家としてのキャリアはキックボクシングから始まり、新日本キックボクシング協会ウェルター級4位にまで上り詰めたものの、プロボクシングに転向。

その後は日本を代表するハードパンチャーとしてKOを積み重ね、一時は世界を取ることも嘱望された。しかし、プロ15戦目で初黒星を喫すると、そこからはキャリアの停滞期を迎え、以降2年弱の間に4度の敗戦を経験。

それでも再び這い上がり、2016年12月には悲願の日本ライト級王座を獲得。

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しかし初防衛戦で王座から陥落すると、復帰戦となる8回戦で勝利した試合を最後にリング上で現役引退を表明している。

キックボクサーを経てボクシングの世界で日本王者に輝いたのは土屋修平が初のこと。経歴としても異端ではあるが、土屋修平が最も異端である理由としては、現役時代からボクシング界に対してしばしば苦言を呈してきたからだ。

伝統ある競技として一定の根強いファンを抱えるボクシング界に対して、歯に衣着せぬ発言をSNSで展開することでこれまで賛否両論の議論を起こしてきたことでも知られている。

今回はそんなボクシング界の異端者である土屋本人にインタビューを申し込み、その真意を探ってきた。「ボクシングはなぜ稼げないのか?」をテーマに1時間半に及ぶロングインタビューを行い、この記事ではその模様をノーカットで文字起こししたものになっている。

インタビューの模様はこちら

ー土屋さんは以前からSNSでボクシング界について度々苦言を呈されており、その発言の真意を尋ねたくセッティングさせていただきました。まず土屋さんが考えるボクシング界が抱える課題について教えてください。

まず言いたいのはボクシングは一般の消費者にどう売り出して行けばよいのかというのが全く考えられていないし、仕組みとして作られていないということ。

例えば今スマホで「K-1」って調べるじゃないですか、すると一番最初に公式サイトが出てくるんですよ。他にも「KNOCK OUT」って調べたら公式サイトがこうやって出てくるじゃないですか。

それでボクシングで調べるとまとまった公式サイトが出てこないし、現代風に洗練されてもない。読みにくいものばかりだし、ニュースといっても大した記事がでてない。何が言いたいのと言うと、とにかく新しく興味を持った人が情報を得るのにハードルが高いんです。

ー特にスマホ世代の若い人はそうですよね

そうですよね。K-1を見て気になった選手を調べれば、すぐに公式のニュースが出てくる。

でもボクシングの選手を調べても日刊スポーツとかが出てきて細かいパーソナルの情報は出てこないんですよね。あとは村田諒太や井上尚弥みたいなメジャーどころしか出てこないじゃないですか。これじゃ選手や興行を発信するどころではないですよね。

これは協会がちゃんとしたサイトを作っていないからだと思うんですよ。

ー仰る通り、例えば日本タイトルマッチの試合があってたとしても、それが公式に掲載されているサイトを調べるのは一苦労。海外にはボクレコがありますが、英語だから日本の一般ユーザーが使うには敷居が高いですよね

そうなんですよね。なのでそこは凄く閉鎖的。何も発信できていないじゃんって。プロなんだからもっと発信されたり、していかないと。誰かに見てもらわないとお金を貰うことはできないじゃないですか。

ー今日はそのボクシングの課題について土屋さんに語って頂き、その解決策を探っていきたいと考えています

日本は食えないスポーツが凄く多いんですよね。でもその中には海外では食えているスポーツもある。「じゃあなんで日本だと食えないの?」っていうのはもっと日本でも考えてほしいと思っている。

ー土屋さんは以前からTwitterやFacebookでそういった話を投稿されていますよね

昔は控えめにやってましたけど。

ーいつから問題点を感じていたんでしょうか

俺が最初に投稿したのは2,3年前くらいかな。「このままじゃボクシングは終わるな」と思って。

ランキングが上位から行ったり来たりしている時に、ある人たちをTwitterで集めて、いつどこどこに集合ねみたいな感じで。それで集まって、そこで「ボクシングこのままじゃ終わるぜ」って話をして。スポーツでどう稼ぐのかを考え始めたのはそこからだと思います。

僕の考えでは「スポーツエンターテイメント」という形で稼ぎたくて、そのためにはどうすれば良いのかって考えていたんですよ。ラスベガスなんか演出とか凄いじゃないですか。それとオールアクセスとか事前の密着からガッチリついているし。

ああいった番組があるから試合を見たくなるわけで、その日唐突に試合をするだけだったら、オリンピックでも見ていた方がずっと良い。

ー選手への共感がないとただ高いレベルの試合を見ていても面白くないと

そうなんですよ。共感が得られない。誰かに見てもらう努力をしないのなら、勝手に一人でやってろよと思う。人を集めて試合をして、盛り上がる試合をするところまでが仕事なんだよっていうものを、みんな分かってないんですよ。

ーやろうとしているんじゃなくて分かっていない

そう。わかってないんですよ。僕の感覚ではですけど。みんな本当に試合をして不思議とどこからかお金が貰えると思ってる。

ーランクングが上がればお金を稼げると

そう。ランキングが上がれば不思議とお金が貰える。チケットの手売りではあるんですけどお金が貰えるっていうのがあるから、考えなくてもやっていけるのかもしれない。じゃあ翻って「誰がもともとお金を払っているの?」っていう。「メイウェザーがあれだけ稼げるのはなぜだか知ってるの」と聞いてみたい。

意外とみんな知らないと思うんですよ。そんな簡単なことを。

何百万人がテレビで契約して1回の放送に5000円とか1万円とか払って見ているんだよというのを。そこまでいくのにメイウェザーがどれだけ努力してキャラを作っているのか。プリティーボーイからマネーに変わっていき、どうやって稼いでるのっていうのを多分皆わかっていない。

ーPPVマッチ自体が年間5,6大会ほどで、ほとんどの世界王者はPPVマッチに関わることもできませんし、PFPの上位だからと言ってPPVが良く売れるというわけでもありません

そうですよね。PPV繰り上げっていいますもんね。しょっちゅうやっている訳ではない。一番はそういうところの教育だと思います。やるべきことは。

そのために選手会とかも作ろうと思ったんですよね。教育もそうだし、それ以外にも選手の権利を守るためにだとか。

ー今はボクシングは選手会はないんですね。協会がそういうのを用意しているものだと思っていましたが。

ないですね。協会と言っても各ジムの会長たちが集まっているだけなんですよ。あまり統一された機構ではない。JBCは一つだけど、その中の決定は何人もいる会長たちの多数決で決めるよって感じのものらしいんですよ。だからそこを変えるのは難しい。

選手会で何をやりたいのかというと、一番大事なのはボクシングの色々な決まりごとの統一ですね。

まずファイトマネーの統一はするべきだと思う。ファイトマネー自体は安くてもいいと思うので、全国的に統一したい。例えば東京で試合をやるのと地方で試合をやるのにファイトマネーで大きな差がある。

地方でボクシングをやってる選手でほとんどファイトマネーを貰っていない人も多いと思う。現金でいくら貰っているのかは分からないけど、ほとんどタダ働きみたいな感じでやってる選手が多い。

一応規定では決まっているんですよ。ファイトマネーがいくらくらいって。C級はいくら、B級はいくら、A級はランカー、チャンピオンはいくらって。大体ですけど本当は決まっている。

でもそれが本当に払われているのかは微妙なところ。ジムによっても違うし、そんな曖昧な業界があるかいって。

ほぼ不可能な話ですけど、例えば選手全員から、JBCに加盟しているプロ選手1500人全員から1人1万円の年会費を取って選手会が立ち上げられれば、年間1500万円になるじゃないですか。

それで「本当はこの額って聞いていたのに、試合をしたらこの額しか貰えなかった」となったときに、本当はファイトマネーを欲しいと言いたいはずだけど言えなかったり、会長から金はやらないよと言われるって話もあるので、大まかな話で言うとそこに介入したり、弁護士を立てるのであればその費用を出すような選手会をできたらいいなと思っている。現実的には難しいですけどね。

とりあえず意思統一ができないんですよ。地方のボクシングジムもそうだし、ジムの会長の力が強くて、そこを通して話をするのは難しくて、選手と直接やり取りすることができない。

今はSNSがあるので、ある程度の範囲には連絡できるけど、それをやっていない選手も多い。そういった選手はどうするのかという話にもなるし結構難しい。

ーキックボクシングでも佐藤嘉洋さんが代表となって選手協会が始まりました

やっぱりそういうのも大事だと思うし、選手の権利を守ることが重要なのではないかなと。

あとは話は変わりますけどイベントのエンターテイメント性ですね。

例えば僕が「土屋プロモーション」をやっていて、とあるイベントに5試合・10人の選手を集めて試合を行いたいとします。じゃあ試合の日にどうやってイベントを盛り上げるか。その時に今の仕組みだと「今日はこういう仕事をしてくださいね」という集会がないんですよ。

今は会長からの人づてで「あの日に試合が決まったよ」ということしかない。何月何日に試合をするよというだけ。

K-1とかKNOCK OUTとかならイベントの段取りが決まっていて、イベントの日は何時に開会式があって、第何試合が終わったら休憩があってという打ち合わせが入るから、イベントを通じての選手の振る舞いが自然と分かるじゃないですか。

でもボクシングはイベント当日の選手の入り時間もバラバラなんですよ。ジムごとに選手が入る時間もバラバラで、普通の考えなら演劇なら会場入りをみんなでして、みんなで準備してリハーサルして、本番をやって、みんなでありがとうございましたとなって始めて終わりじゃないですか。

ボクシングはそうではなくて、バラバラに入って試合が終わったらバラバラに挨拶をして帰る。そんなものは学芸会と同じなんですよ。同じイベントに出ているという感覚がない。

そもそもイベントに出ているという感覚がないと思うんですよね。自分は試合に出ることだけが仕事だという感じで、試合をしたらもう自分の仕事は終わり。それで酷い時にはトランクス1枚で会場に出てきて自分の身内だけに挨拶して帰る。本当に俺はあれが嫌い。本当に恥ずかしいと思う。

メイウェザーが試合終わって、客席まで降りてきて身内のファンに「今日はありがとうございました」って行く?もしやっていたとしてそれはカッコ良いことなのか? 周りからどう思われているかをもっと考えて欲しい。

俺がスポーツに求めているのは「子供たちに夢を与えれるか」が一番大切だと思うんですよ。立ち振る舞いとか収入も含めて、子供たちが夢を与えるというのを核にしないといけない。でも今の振る舞いと見ていたらどっちらけじゃないですか。

「リングの上で輝いているあの人に会いたい」と思わせるようにしないと駄目なのに、そんなんだといつでも会えちゃうし、ペコペコして、そこでお金の受け渡しとかをして、ありがとうございましたって。また来てくださいって、どういうことですか。

例えば観客が2,000人いるとするじゃないですか。お金を出してきてくれた人に感謝するんだったら、2,000人全員がお金を払ってるんだから全員に挨拶しようよ。それならリング上でありがとうございましたで済む話じゃないですか。あとは個別でメールすれば済む話。

そこはみんな勘違いしている。身内にしか感謝しないんだったらプロじゃないと思う。それならアマチュアでオリンピックを目指したらいいじゃないか。それはプロ意識というよりも普通のこと。それが出来ていない人が多すぎる。

ー関連する問題で、手売りの問題があります。現在のボクシング興行は手売りへの依存が強い。ボクシングを見に行くというより、知り合いの試合を応援にいくという比率が高くなっています。

そこに依存しちゃうと他の人に伝わらないし、負の要素の方が多くてプラスの要素は少ないですよ。手売りを頑張らないと成り立たない興行も多いのは事実としてあるけど。

それならプロモーターは何をしてるんだって話になってくる。今のプロモーターは選手にチケットを渡して、後は売ってくれで終わりのところがほとんど。しっかりとプロモーションをしている所なんて見たことない。

ポスターを作って終わり、なんてものは仕事じゃない。本来なら出場する選手を売り出してそれで金にしろよと思ってる。それなのにそれをやっていないから怠慢だということですよ。

ー確かにテレビ中継される世界戦以外でマス向けのプロモーションはなかなか見かけませんよね

ただプロモーターだけに責任があるというわけではないかもしれない。

実際にある話としては、プロモーターが試合の煽りVTRや事前の取材を所属ジムの選手にオファーしてもジムからクレームが入ることも多いらしいです。「うちの選手を勝手に使うな」とか「選手の練習の邪魔をするな」といった具合に。

お願いしても了承を得られないことがあるくらいで、選手を管理しているジムのプロモーション意識の問題の低さも問題かもしれない。

ー今のシステムはジムの会長さんなりが興行をするという流れになってますよね

そうですね。今のボクシング界は基本的に、ジムの会長が興行権を持っていてそれを行使して開催するという形。ジムにチャンピオンがいたらその選手を使って自主興行をやる。それでそこについているスポンサーとかにチケットを配っちゃえば良いというやり方なんですよ。

ただし、そこを変えないとイノベーションは起こらない。

だからジムがプロモーションをしてジムがお客さんを集めて、ジムがお金を払うという作りそのものが限界なんですよ。そうするとジムが全てになってしまう。

一般の人たちが考えているのは、ボクシング協会がランキングを作っているわけだから、「じゃあ何位と何位が試合をしてくれ」という指示が出て、ボクシング協会からいくらかお金が払われるという仕組みが想定されてる。でも実際は違う。

もう会長同士が「この選手とこの選手がやれ、ファイトマネーはこの言い値で。じゃあ俺はこれだけだから選手はこれだけ。」という、謎の分配があるわけですよ。それもおかしな話だなって思って。

ーそういえば手売りについてですが、これを辞めるとほとんどの興行が成り立たなくなってしまうかもしれない

基本的にはそうだと思います。特に最初は。

でも手売りに使う労力、例えば僕は300枚〜500枚くらい売っていたんですけど、それは結構な労力になっているんです。

400人も友達がいるわけではないし、僕は後援会がいるわけじゃないので、そのチケットを売る作業は全部自分でやるわけじゃないですか。他にも、この人は正規の値段では買ってくれないからちょっと安くしないといけないとか。チケット代の取り分もジムによってまちまちだったりと、色々と苦労は絶えないです。

まあその問題は置いておいて、その労力を宣伝とプロモーションに使えれば全く問題ないとも思いますし、あとはジム側と興行主の努力。それが今は圧倒的に足りないと思います。

僕は本当はファイトマネーについて、チャンピオンクラス以外は安くて良いとも思ってる。4回戦ではチケット12万円分なんですけど。それで現金だと6万円という謎のシステム。B級だと現金8万、A級だと12万という謎の決まりがある。

それでも僕は高いと思う。A級はそれだけ貰っても良いけど、B級やC級の選手はもう少し安くて良いと思う。

ーランクが高い選手に集中させるべきだと

それでやるべきだと思う。あとはメインで客を呼べているんだったらメインに100万円くらい渡しても良いと思う。

ー今のボクシングはメインにタイトル戦があって、その下に4回戦とか6回戦の試合という構成ですね

基本的に、その4回戦とか6回戦の選手がチケットを売るんですよ。だから興行主から言うと10試合とか20試合を組んでしまった方が儲かる。

ただボクシングは1興行でのラウンド数の上限が規定されているから、それ以内に収めないといけないからそれだけの試合を組むことはできないけど。

ただ僕のイメージとしては日本タイトルマッチ1つで勝負してほしいと思っている。日本タイトルマッチをやるのなら、4回戦くらいの試合を2試合やって、あとはメインで勝負するために、メインのプロモーションをガンガンやるべきだと思う。

ー海外でもメイン以外はスカスカということは良くありますよね

そう、スカスカだったらやらなくて良いじゃんって思うんですよ。ファイトマネーがもったいないし。

興行数が多いというのも問題らしくて、俺は結構強みだと思っていたんですけど、1年で365日中100日くらいボクシングの興行があるんですよ。3日に1回くらいはやっている。

全部手売りなしでやろうとすると赤字になっちゃう。でも強い選手だけを集めてやろうとすると、割りと黒字は出るんですけど。

ー空席が目立つ興行も多いですが、それはやはり分散してしまうからなんでしょうか

分散しているというのもあるし、選手自体に集客力があるかどうかももちろんある。

それと10試合組んだとするじゃないですか。それで1試合目の人が1,000人呼んだとしても、1試合目が終わったらその1,000人が帰っちゃうんですよ。もうイベントとして成り立っていない。発表会になってしまってるから。

普通はメインというんだから、例えば飯食ってて前菜で帰らないじゃないですか。もっと美味しいものを順番に食べて、コースを楽しんで帰るわけじゃないですか。それなのにボクシングそのものを見に来ている人は少ないから前菜だけで帰ってしまう。

ープロになるのが比較的容易で選手数が多いというのが根本的にあるのでしょうか

そこはどうなんですかね。興行数が増えること自体は良いと思っていて、僕が言いたいのは差別化です。クオリティの高い興行を作って、少人数でガッチリ稼げばいいと思うし。

あとは4回戦とかの選手が経験を積むのなら小さい箱で良いと思っていて、例えば新宿FACEだったりとか、その辺りの体育館でも良いかもしれない。俺は本当に後楽園ホールが嫌いで、後楽園ホールが聖地とか言われているけど、昔から何が聖地なのかって思っているんですよ。

ニュースを調べていた時に誰かが言及していたことなんですけど、スポーツで大事なのは3位にスター選手、2位にITを駆使した集客、そして一番大事なのがスタジアム。

会場作りが一番大事なんですよ。今でいえば広島カープのマツダスタジアムとか、横浜DeNAの横浜スタジアムだとか、お客さん目線で食事を含めてインフラとかが整備されていて、実際に行ったお客さんも大満足している。

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お客さんも盛り上がれるような作りがあるはずなんですが、それが後楽園ホールだと安く借りられるとはいえ、飲食も売店があるけど全然弱い。僕はビールの売り子を導入すれば良いと思うんですけど、それもできないみたいなんですよ。ホールが飲食の全てを管轄してるんで導入できないらしくて。だから1度席を立って買いにいかないといけない。

楽天のコボスタだと席から飲食の注文を席からできるそうなんですよ。最先端のところはそういったレベルでやっているのに、ボクシングは一回立ち上がってビール買いにいって、帰ってきた時に試合が終わっていたらあんまりじゃないですか。

僕の夢はボクシングをやるとしたら専用のスタジアムを作りたいんですよ。ムエタイだとラジャダムナンとかルンピニーとかあるじゃないですか。ルンピニーとかは何年か前に新しくなって凄い綺麗になっている。

でも日本にはこれだけ格闘技が浸透しているのに格闘技のスタジアムってないじゃないですか。後楽園ホールで何が一番問題かっていうと、誰もあの場所に後楽園ホールがあることを知らないということなんですよ。

例えばその辺の女の子に「後楽園ホールがどこにあるか知ってる?」って聞いたら誰も知らないと思うんですよ。なぜかというと外から見て分からないから。

東京ドームは外から見ればすぐに分かるけど、後楽園ホールは外から見ても分からないんですよ。

ー確かに始めてホールにいったときは、建物の5階ということでイメージとは違うものがありました

そうですよね。その初めての感覚を大事にして欲しいんですけど、自分も後楽園ホールに行こうと最初に嫁を誘って、その感想を聞いた時に「まず1階に中華屋があることに笑った」って言ってて、それと「エレベーターで行くのに笑った」というのと、「リングサイドがパイプ椅子なのに笑った」っていう答えが返ってきたんですよ。

業界の人はそこに誰も気づいてないんですよ。実際フラっと入る人はなかなかいないけど、仮にフラっと入る時に、あの環境で5階までエレベーターを押して、入ってくるヤツなんていないですよ。そんなチャレンジャーなヤツ。そういう一般の人の感覚をみんな持っていないから。

最も大事な会場作りで、ここに来てくださいというお客さん目線のサービスが全くされていない。

ー後楽園ホールは聖地ということで、手を加えてはならないようなイメージがありますよね

そうそう。それが良いっていう人も正直たくさんいるんですよ。でもメジャーにしたいんだったらそうではないでしょって。

ボクシングの他にもキックやMMAを含めると年間250回以上は格闘技が開催されているわけじゃないですか。どの団体も会場を探してるんですよ。それでだいたいは後楽園ホールかディファ有明、あとは新宿FACEとかになる。でも仮に一つスタジアムがあれば、そこで全部できるじゃないですか。見やすい会場があれば。

ー250回あれば、ほぼ毎日稼働できますよね

3,000人とか4,000人とかのキャパシティで、センターコートというか会場のど真ん中にリングがあるような会場があっても良いんじゃないのかなって。

もし格闘技専門のスタジアムを作るとしたら結構な需要があるんじゃないかなって思うんですよね。だから誰か500億円くらい貸してくれないかなって思うんですけど(笑)

格闘技用の照明もあるし、スクリーンもあるようなスタジアムがあれば。基本的には日本人はみんな格闘技が好きだと思うんですよね。

ーボクシングは凄く長い間続いているわけですし

総合格闘技ではPRIDEもありますし、K-1の隆盛もあったわけじゃないですか。もっと前から言えば武道もあったわけだし、基本的にはみんな格闘技が好きなはずなんです。ただそこでお金を儲けようというマインドがないから良くないなと思っていて。

ーそういえば専用スタアジムといえば、ガンバ大阪のホームスタジアムはほとんど負担せずに作られているんですよね

そう吹田スタジアム。あれは確か140億円くらいでできていて、そのほとんどが民間の寄付金。その営業権利を全てガンバ大阪に委託するという形式なんです。おそらく地方自治との連携と言うか、地域とどれだけ密着できているのかというのもありますけど。

もし格闘技の専用スタジアムみたいなものが何らかの手段でできたりすれば、何か変わるんじゃないのかなと思っています。

ーやるとしたらボクシングが先導することになりますよね

もちろん興行数も一番多いわけだしそうなると思います。本当にいつも思うのは、ボクシングは個人が世界一稼げるスポーツなわけじゃないですか。(※注: メイウェザーは3度アスリート長者番付で1位になっている)

オリンピック種目にもなっているし、世界中で「ボクシング知ってる?」と言ったら、70億人中50億人くらいはボクシング知ってるはずなんですよ。

そんなスポーツが日本でこれだけ稼げないというのはおかしいです。もちろん長くて見てられないとかそういう人もいるでしょうけど、ボクシングというコンテンツ力自体は絶対的にあるから、「なぜこれだけ稼げないのか」を考えてくれないのかと言いたい。

ーボクシングは90年代で言うと辰吉丈一郎、畑山隆則といったスター選手が出てきて世間を魅了していた。一部のスター性を持った人がテレビで大きく人気を集めたは良いが、引退すれば元の状態に戻ってしまい、再び輩出する仕組みというのがないように感じます

ボクシングは個人競技ではあるんですが、ある種タレント業なんですよね。チームとかだとブランディングしやすいじゃないですか。個人スポーツというのはぶっちゃけた話、タレント業なんです。

例えば「土屋修平vs加藤善孝」で試合するというよりも、ジャニーズが試合をした方が絶対にお客さんが入る。それこそ東京ドーム埋まるんじゃないのかというくらいの。例え話ではあるけど、タレント業というのはそういうことだと思うんですよね。

ー今はSNSがあってセルフプロモーションができる時代じゃないですか。ただ総合やキックに比べるとボクサーはそれほどSNSを活用していない印象がありますが、どうしてなんでしょうか

それは本当になぜやらないのかは自分でもよく分かっていないけど、確かにそれも問題ではあると思います。

今UFCを見ると、入場してきた時の映像にTwitterアカウント・Instagramアカウントが出るように、海外でSNSを活用するのは当たり前。でも日本で言えば内山がブログやっていたり、井上尚弥が最近Twitter始めてましたけど、そういう努力からしないといけない。

そして、それをプロモーター側が管理しないでどうすんねんという。例えば余計なことをいったら「それはダメだよ」と言うとか。「もうちょっと試合盛り上げてよ」「もう少し悪口言ってよ」とか。プロモーションってそういうことじゃないですか。

ー土屋さんは現役時代に会見で挑発したり、勝利した後にはバック宙するなどしていて、それが人気につながっていたと思いますが、それもプロモーションとしてやっていた部分なんでしょうか

そうですね。僕が一番思っていたのは自分の価値の最大化なんです。これはもうボクシングだけの話ではなくて。

とりあえずボクシングにおいて何を考えたのかというと、試合をした日に俺のことを覚えてもらうにはどうしたら良いかということ。まずは金髪にするのは決めていて、セックス・オン・ザ・ビーチで入場して、試合で倒して勝ったらバック宙する。その3つだけは絶対に決めてて。

入場曲も固定すべきだと思う。例えば名前覚えてもらえなくてもそこで印象残しておくのも良いんじゃないのかな。「とりあえずあの曲が流れれば俺の顔を思い出す」という刷り込みじゃないですけど。そういうのができたらいいなと思って。

だってヴァンダレイ・シウバとか曲聞いただけで分かるじゃないですか。

ーそうですね。他のところでも流れれば、あ、ヴァンダレイだって分かります

そう、分かるじゃないですか。そういうのが俺はカッコイイと思ってたの。

そういった努力も足りないし、自分をどうやって売り出していくのか、どうやって金にしていくのかということを多分考えてないんですよ。それを考えるべきではないという意見もわかりますけど。選手は試合だけに集中しろ、というのももちろん正しい形ではあるんです。

それでもどうやってチケットを売ろうとか、どうやって個人の価値を高めて色々な人に見に来てほしい、と思ってもらうようにするかは凄く大事なこと。だからそこをもっと突き詰めて考えるべきでしょう。

ー現在はK-1グループだと選手をタグ付けしてSNSで周知し合ったりと、一致団結してプロモーション活動をしています

それもK-1という一つの統治機構があって、K-1という大本のアカウントがあるわけじゃないですか。それがタグ付けしてやることで上手く回っているんだと思います。ボクシングだとそういうものがないので。

ー自分一人だと届かない人にも他の人がRTしてくれることで届きうるというのがSNSの本来の強みなのに、できていないと

普通そうやるべきじゃないですか。それができていない。

1人あたり1,000人のフォロワーがいて、それが10人協力して回せば1万人に伝わるわけだから、それならやればいいじゃん、ということじゃないですか。

ーそれをやるには選手会が必要だと

そうですね。選手会だったり協会だったりと一つのまとまりがないと絶対に無理ですよね。
そのまとまりをどうするかという話で、選手会を作るとかそういうことも可能であればやりたいですし。

ー協会から自発的にそういう流れにはならないのでしょうか

そこは色々と協会も面倒くさいことがあって。結局一つ一つ会長同士で交渉しなければならなくて、まとまりがないんですよ。あとはチケットを渡しておけば良いしというのもあるし。

ここで問題なのはチケットの方が儲かるんですよ。さっき言ったみたいに、4回戦なら現金6万円かチケット12万円かという選択に。俺でいえば現金100万円分かチケット200万円分と言われれば、チケット200万円分の方が儲かるんですよ。売れる人なら、ですけど。

一人ひとりの選手が何とか頑張ってチケットを売る営業努力をしたほうが儲かっちゃって、それで何とかなってるから根本的に変えようという動きにはならない。そこを皆もっと考えていかないといけない。

ー短期的に変えちゃうと損するけど、どこかで変えないとビジネスとして伸びないと

実は俺自身はボクシングが簡単に伸びるとは思っていないんです。

そもそも時代にボクシングのルールが合ってないんです。だって今はスマホで何でも見られる時代で、競馬なんて2・3分で終わるようなコンテンツじゃないですか。もっと早く終わるコンテンツもあれば、YouTubeに10分くらいで楽しいコンテンツがあるしで、ボクシングは12R36分で、休憩合わせると50分くらいじゃないですか。

それをずっと集中して見てるというのは辛いですよ。

ー長い競技というと野球は今でも高い人気を保っていますが、それはどう考えているのでしょうか?

野球は極論言ったら、寝ながら見られるじゃないですか。ボクシングだと集中力が問われる。野球だと結果だけ分かれば良いというスタンスでも良いし、球がどうとか、次スライダー投げるんだとかそこまで見てるわけじゃない。

多分流して、会場行っても飯食いながら喋りながら「あ、打った」とかそういう感じだと思うんです。

サッカーは国vs国の戦いが根底にあったりしますけど、ボクシングは結構真剣勝負で集中して45分見るというのは相当ですよ。よっぽどイケメンだったり、面白かったりしないと見てられないですよ。

ータイトルマッチでおしゃべりとかできないですよね

その辺も含めて敷居が高いですよね。

ーここからボクシングというイベントがどうすればお客さんに見てもらえるかというところをテーマにしたいんですけど、これまで上がった課題を踏まえてどのように改善していくべきでしょうか

試合を盛り上げたいんだったら、まずは選手のコントロールですよね。それはもうお金もかからないし、プロモーターがファイトマネーを払ってるんだから、試合がある日は選手を1日拘束にするべきだと思うんです。

昼から試合が終わる21時くらいまでは1日拘束にして、集合時間も解散時間も同じで、一つの興行を今日は一緒に盛り上げましょうという意思統一が必要です。

試合が終わったからといって出てくるようなものではないし、一番の問題はさっきも言ったように会場作りで、控室に簡単に入れないようにしきりを作ったりとか。

ー控え室はやっぱり簡単に入れるんですね

そう、今は結構簡単に入れる。入場口にしきりを付けるとか。あと安い席と高い席のしきりがなくて、例えば4,000円のチケットを買っても、ちょっとイキれば1万円・2万円の席に勝手に座れちゃう。

そんなことが今だと平然に行われてるけど、冷静に考えたら他でそんなことある?と言いたい。一つ仕切りを作ってしまえば済む話だし、警備員を一人でも置いて「見てますよ」というメッセージを出せば問題ないでしょうし。なんでそんな普通のことをやらないのという話。

とにかく会場のルール作りですよね。あそこはもう無法地帯になってる。会場のルール作りが一番やるべきこと。

ーそれは後楽園ホールのルールでやってはいけないとかあるんでしょうか

警備員一人立てるのにいくらとかもありますけど、一番は怠慢ですよね。誰も注意しないし。慣れてるプロモーターなんかはあっちいったりこっちいったりは頻繁にあります。

そこで交渉したりとか。後楽園ホール集合で、そこで試合のマッチメークとか交渉していたりしていて。もはや会場が集合場所になってるんですよ。

「今日後楽園で試合するから見に行くでしょ、じゃあ会議しようね」みたいな形で。プロスポーツなんだからそういうことはやめて、5,000円の席ならここまで、1万円の席ならここまでしか入れないようにする。こんなのは当たり前のことじゃないですか。

そうじゃないと1万2000円の席なんて購入したいと思いませんし。それとあんなに固いパイプ椅子なのはどうかと思いますけど。

1万2000円の席だったらこれですよ。(足と手を広げながら) これでドリンクホルダーも付けて、机とかもあるかもしれないし。1万2000円払ったのならそれくらいのサービスを受けられるべき。実際はパイプ椅子で縮こまって観戦しなければいけないけど、それに1万2000円払うのかと言ったら俺は払いません。

ーやっぱりチケットは高いと感じますか?

いや実はそうは感じないです。1万2000円は座席の問題で、今の座席のクオリティにしては明らかに高いと思います。ボクシングというエンターテイメントとして見て、メインイベントが世界タイトルマッチや日本タイトルマッチだったら1万円くらいだったら払っても良いでしょうし。

一番の問題は「1万円を払って、その体験に1万円の価値を出せているのか」ということじゃないですか。良く例えで出てきますけど、ディズニーランドにはいくらかかるのか、8,000円くらいですか。まあ安くはないですけど、8,000円であれを一日楽しめるわけじゃないですか。

ではボクシングで1万円払ってそれ以上の満足を生み出せるのかというと甚だ疑問だと思います。ディズニーランドと比べると負けてるけど、本当は負けてるほどのものでもないと思うんです。まあ好みの問題もありますけど、ボクシングが好きで1万円を払ってくれた人に1万円の価値を提供してあげることがなにより大事だと思っています。

5,000円だったら5,000円分の価値。それ以下でもなく、それ以上だったらお得だったよね、というくらいの価値を与えてあげないと、そんなものは商売ではないと俺は思います。

ーこれまで話してきたことは、コアなファンから少し離れて一般のお客さん目線でのお話になります。ただ現状を変えていくに当たって既存のファンから反発があるかと思いますが、それについてはどのように考えていますか?

そういったマニアみたいな人たちは一定数いるけど、そうじゃなくてもっと広いファンに向けて、マニア以外の人たちにアプローチしていかないといけない。僕らだってモテたいですし、可愛い女の子に来てもらってキャーキャー言われたいし、そのためにボクシングやってるわけじゃないですか(笑)

そういう人たちがどんどん来れる会場にしていかないといけないんです。だから今の流れとは別に全く新しいものを作っていかないといけない。

ーそういった人たちは今のホールには来てくれませんもんね

そう、だからそういう人が来れるように。ホールでやるとしても、もっとキラキラした会場にしていかないといけない。

ー演出なども少ないということでしょうか

それも結局はお金がかかるからという話なんですけど、お金がかかるからっていっても、お客さんからチケット代貰ってるわけだから、何言ってんだよという話なんですけど。

聞いた話なんですけど、後楽園ホールを使う時のスケジュールとして、キックやプロレスなど他の競技が先にスケジュールを抑えられるけど、ボクシングはその代わり利用料金が安く済ませられる。

単純計算でホールにMAX2,000人入るわけじゃないですか。お客さん一人あたり5,000円だとしても、ちゃんと売れば1,000万円儲かって、仮に利用料金が100万円だとすると、一人100万円ずつ払っても9人くらいに渡せる。もちろん諸経費とかは別にありますけど。

なんでそういう考えにならないの、っていう所なんです。まあ現実は難しいんでしょうけど。

でもアーティストとか広告業界の人とかからしたら、「2,000人集められないコンテンツってどうなの?」っていう話だと思うんです。これだけの宣伝文句やコンテンツ力があって、人の殴り合いが見れるってなかなかないわけじゃないですか。非日常という。

それで1000人、2000人埋められないようなボクシングに辟易してるんです。

ー話は結構変わってしまうんですけど、メジャーイベントとなるとキックやMMA団体の方がボクシングよりもチケットは売れているにも関わらず、テレビの地上波中継になればボクシングの世界戦の方が高かったりする。ボクシングのテレビ中継というのは一つの強みではないでしょうか。

ああ、確かに。でも結局誰が見ているかという話で、アメリカのニュースかなんかで見たんですけど、ボクシングを見るようなボリューム層って50才以上とかなんです。そこの年代とかが昔ボクシングが好きで見てるというのが大きいんじゃないんですかね。それこそ辰吉とかより前かもしれないですけど。

紅白歌合戦みたいなノリで見てると思うんです。だから多少視聴率が上がるし、テレビ局もそこを狙っているのかもしれない。50才以上の人たちは絶対的にボクシングが好きではあるという。

ー1960年代とかだとボクシングの視聴率80%とか取ってたんですよね

ボクシングという競技自体が、戦後の高度経済成長とかの時代に伸びるスポーツではあるらしくて。モハメド・アリとかもそうで、黒人を立ち上がらせるんだということで注目を浴びたわけじゃないですか。そういうものが当時の時代背景にあるんじゃないのかなと。

ーまたボクシングの世界戦は権威というのが浸透しているのもあると思います。例えばMMAで最高峰のUFC王座に挑むとなっても一般媒体やテレビで取り上げられることはありません。今のUFCでタイトルに絡むのはボクシング以上に難しいといっても過言ではないのに、世間にはほとんど届くことはなくて、例えば岡見勇信vsアンデウソン・シウバが行われたことを知っていた一般層はどれくらいいるのか。

そこはボクシングの強みですよ。何だかんだ伝統とマスメディアとのつながりがあるので。「ボクシングの世界王者」という名前が強いというか。確かに他の競技とは違いますよね。もっとそこを出していけばいいのに。

ーあとメディアの強みって集客にはつながらないのでしょうか。世界戦でも埋まらない興行もありますし

そこで集客しようとなるともう一段階必要になる。今の若い子や一般の人たちに会場に来て、試合を見せようと思うと結構ハードルが高いんですよ。今はスマホでどんなコンテンツでも見られるし。

会場にわざわざ足を運んでコンテンツを見たいかという。そこをどうやって越えられるかということです。

ー体験としてのショーアップも足りないし、選手のセルフプロモーションも足りていないから会場に来させる動機づけにならないと

会場に来ていただけるのは凄くありがたいんですけど、多分みんな会場に来てガッカリして帰しているんですよ。そこが一番問題だと思います。

会場に来て、「凄いのを見た!今日は楽しかったな。」で帰るのなら貴重な体験ですし、それは素晴らしいことですけど、今はそうではなくて会場に来て「なにこれ汚い、この階段何か怖い」からの「エレベーターに入るんだ」からの「会場に来てもヤニ臭い」という感想を持たれちゃいますし。

野球で改革に成功したDeNAが一番最初に何をしたのかというと、トイレの改装なんですよ。そういう一般のお客さん目線から始めるべきじゃないですか。

女性は発信力が多いので、汚い後楽園ホールで、1人がネガティブな感想もったらそれが10人くらいに広がっちゃいますから。行って残念な気持ちで帰しているというのが一番良くない。ボクサーたちは特別な舞台に上がることに、特別なところに来てもらうわけですよ、お金払って。

「みんなは特別なところに来てるんだよ」という価値を与えられていないのが問題。

ーキックボクシングでは最近は選手の無料の撮影会とかサイン会とかが行われるようになっていますが、ボクシングではそういったファンサービスは行われているのでしょうか?

ないです。

ー以前にノニト・ドネアのサイン会が行われていましたが

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あれはドネア単体で、横浜光さんのジムの主催で行われたから。ドネアに関してはサイン会やるよという形で行われたんですけど、全体としてそれを導入しようとしたときに問題となるのが、仮に選手でサイン会や握手会を行うとしてもそういった意思の統一ができないんです。

統一された意思の中にいないから、誰かが握手会やるよと言っても伝わってる人、伝わっていない人がいて全員に伝わらないし、下手したら帰っている選手もいます。負けちゃったから帰ろう、とか勝手に挨拶しているやつもいるしそこが一番問題ですよ。統一されていない。

ーこれからのエンターテイメントとしては会場での価値を高める必要があると

ルール作りです。選手側のルール作りと、興行側のルール作りをちゃんとしないと絶対に無理です。

一番変えられるかなと思うのが、協会も無理だし、ジムに介入するのも難しいので、やっぱり興行主。興行主側から変えていくしかないと思っていて。

ーお金になるという材料があれば民間企業も入ってこられるかもしれません

一番可能性があると思っていて、これができないかなと考えているのが、日本タイトルマッチを全部買収できないかなということ。

ボクシングで皆が何を目指していて何が一番イメージ浮かびやすいかなと思ったのが、チャンピオンカーニバルだと思うんですよ。

日本のチャンピオンカーニバルというのはどこの国にもない仕組みで、国内の一番を決めるという一連の興行で毎年行っているという。あれをちゃんとすれば結構上手く行くと思います。

今は現状どうなっているのかというと、1月~4月の間にチャンピオンカーニバルがあるんですけど、その中で選手の会長がバラバラでチャンピオンカーニバルをやっているんですよ。

そうではなくてチャンピオンカーニバルというんだったら、武道館でも取って10階級あるから2日くらいに分けて、5試合・5試合くらいで行う。武道館は利用料が高いから両国国技館でも良いですけど。

ーなるほど。日付を決めて例えば3月3日と4日は絶対ボクシングで抑えるようにすると

毎年そういう風にやると決めて、それで日本タイトルマッチが実現して、その大会に広告を集めれば商業的にも大きくなるはずですよ。ファイトマネーも500万円とか大きな額になるかもしれない。

大きな箱で試合をして日本タイトルマッチだったら500万円、といった作りをやっても良いと思います。

ー1つ質問なんですが、民間でお金のある企業が興行権を買い取ってやるというのは理論上可能なのでしょうか?

可能です。興行権はチャンピオンのジムにあって、興行権を何百万出して買うようなことはできるはずです。

ー外部の人間でもですか?

買えます。口利きさえできればになりますが。誰か仲間さえいれば全然可能です。

ー理論上はまず大きな額の出資を集めて、最初は赤字でも徐々に浸透させて採算を合わせるという事業を起こすのも可能なんですね

それも可能で、それができないかなと昨日もずっと話していたんですけど。

日本タイトルマッチというのは結構特別なものだと思っていて、これはキックボクシングの話になるんですけど、以前KNOCK OUTの小野寺さんとも話したんです。キックボクシングで何が一番いけないのかというと上位概念がないんです。

総合格闘技だったらUFCを目指す、ボクシングだったらメイウェザーやパッキャオ、ラスベガスを目指す。でもキックボクシングにはそれがなくてどこを目指すのか。それを作りたいということでKNOCK OUTを作ったそうなんですよ。

それで日本国内でボクサーはどこを目指しているのかということで、世界王者になったからといって何が貰えるのか。貧乏のままだよと言うのだったら目標にも何もならないじゃないですか。

だったらチャンピオンカーニバルをしっかりしたものに作って、1年に1回そこを目指して頑張るんだぜ、という形さえ作れば。今みんなどこを目指しているのかという話じゃないですか。

世界戦とかは勝手にやれば良いと思っていて、国内でどこを目指すのという時に、チャンピオンカーニバルというブランドさえちゃんと作ればいけるんじゃないのかと思うんです。じゃあそれにいくらかかるのかというとまた別の話なんですけど。

ー民間の事業者でもそうやってボクシングのビジネスに参入できるというのはほとんど知られてないですよね。野球やサッカーといったメジャースポーツはまず強固な国内市場があって、日本シリーズなどは今でも毎年凄い盛り上がりですし。

チャンピオンカーニバルといえば畑山隆則がコウジ有沢に挑戦した試合はフジテレビの生中継と両国国技館での開催となりましたが、それ以来の規模が毎年見られるとなればパっと考えてもすごく面白そうです。

そうですよね。日本人同士の戦いでもそれだけのインパクトを残せると思っているんです。

ー具体的なビジネスの話が出てきましたが、そういえば土屋さんは間もなく沖縄に移って事業を移すとのことですが、それは今のことと関係があるのですか?

いや直接関係はなくて、今すぐどうのこうのという話ではないんです。

自分はスポーツビジネスというものに興味があって、沖縄でまずはスキルを伸ばして成長するために新規事業をやろうかなと。

ーそういえばSNSではセカンドキャリアについても触れていました。この先何するかは聞かれすぎたとも言われてましたが…

実はセカンドキャリアという言葉は僕は好きじゃないんです。スポーツをやって学んだこと、得たものをどんどん活かして、もっとこの先のキャリアを作っていくべきだと思う。セカンドキャリアという言葉だと、ボクシングとは関係のない新しいことという感じがして、ボクシングじゃ何も得られないように感じるじゃないですか。

ボクシングで学んだことはたくさんあるんですよ。延長線上として考えているんです。それはみんなにもっと考えておいてほしいところ。

ー世間一般が思い描くセカンドキャリアって、アスリート生活とは全く別のという印象がありますもんね

そう、生まれ変わって面接とかの勉強したりしてみたいな。全くゼロからやり直すなら、今までお前らは何していたんだという話じゃないですか。何も得ていないのかという話になっちゃうけど、それはキャリアの一つなんだから、そのままのキャリアでいてほしいですね。

だから何も考えずにボクシングだけやるバカにはなるなって言いたいんですけど。

ーなるほど、ありがとうございました。ボクシング界への提言というテーマではこちらで終了させていただきます。

ここまででもたっぷりと話していきましたが、引き続き後編として、現役時代に苦労されたというチケットの手売り事情など、普段表に出ないことについてお聞きしていきたいと思います。

[後編に続く。後日公開予定]

土屋修平プロフィール

1986年9月20日生まれ。愛知県犬山市出身。第60代日本ライト級王者。

幼少期から空手に取り組み、学生時代は様々な球技を経験。大東文化大学時代からキックボクサーとしてのキャリアを積み、キックボクシングでは13戦8勝4敗1分で新日本キックボクシング協会ウェルター級でランキング入り。

やがてボクシングへ転向すべく、角海老宝石ジムに入門。22才の2010年よりプロボクシングでデビューし、デビュー以来12戦連続でKO勝利を収め、ホープとして将来を嘱望される。

2013年に初黒星を喫した後に、紆余曲折を経て、2016年12月に26戦目となる日本ライト級王座決定戦に出場し、3回KO勝利を収めて日本王座を獲得。

初防衛戦で日本王座から陥落後、2017年6月に再起戦で勝利するもリング上で引退を発表。惜しまれながらも現役生活にピリオドを打っている。

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